「ツケマイ」は今の決まり手には無い
競艇の場内実況ではしばしば聞くことのある言葉ですが、初心者は「ツケマイ」って何? と思われる人もいるでしょう。今の勝負の決まり手にはツケマイはありません。以前はツケマイと言う決まり手もあったと記憶していますが、現在は捲りの一種として「マクリ」に加えられています。因みに現在の決まり手は「逃げ」「差し」「捲り」「捲り差し」「抜き」「恵まれ」の6種類で、レース結果に表示されます。最後の「恵まれ」は聞き慣れない決まり手のようですが、前を走っていた選手がフライング返還や転覆などで失格になった場合に繰り上げ1着になることを言います。
ツケマイの語源は?
ところで、ツケマイとはどんな技なのでしょうか? よく映像でツケマイのシーンを紹介していますが、初心者には画面では分かりにくいと思います。そこで詳しく説明します。ツケマイは捲りの一種に数えられるように基本的には内側の艇を外側から捲る技です。ただ、捲りと違うのは内側の艇に並ぶように艇を押し付けて前の艇の推進力を抑え込んでしまうターン方法です。ツケマイの「ツケ」とは内側の艇に自身の艇を着ける(ツケる)と言う意味で、「マイ」とは回ることを競艇ではマイ(舞い)と言うことからツケマイと呼ばれるようになりました。
マクリと何処が違うの?
とても高度なテクニックが必要なため、誰でもできるという技ではありませんが、決まると格好がいいので人気のあるターンです。1週目の第一ターンマークで決めるだけでなく、第二ターンマークで決まることもあるので、高度な逆転技としても使われます。ツケマイと捲りを比べるとその原理がよくわかると思います。捲りは皆さんも良くご存知のようにアウトから高速スタートを決めて、インにいる艇の外側から全速ターンを決めて先頭に出る技です。
一方、ツケマイは握って高速ターンをするところまでは同じですが、イン逃げを決めたい1コースの艇の外側にピタリとつけて動きを抑え込みます。すると、インの艇はツケマイをした艇の作った引き波に飲まれて推進力を失い後退していきます。この引き波効果がツケマイの特徴で、洗練された高度な技術が必要なのです。引き波とは艇がプロペラの回転によって前に進むために出来る白い泡のような波で、これに飲まれると操縦しにくくなり、スピードが落ちてしまうのです。
決まらなかった時のリスクも大きい
ただ、イン逃げに比べて捲りが決まる確率はかなり少なく、逃げが50%前後なのに対して、捲りは15%程度です。差しや捲り差しも決まると見事ですが、捲りは決まると豪快で鮮やかなので、とても人気のある決まり手です。一方、ツケマイは一見地味にも見えますが、外からの全速ターンによって力でねじ伏せる捲りに対して、ツケマイは相手の力を奪って脱落させるタイプの高度な技と言えます。
ただし、意識的に仕掛ければ確実にブロックされてしまい、その時点でアウトです。確実に2着、3着に沈んでしまうのは勿論、もし強引に仕掛けて失敗すれば一緒に外に流され、後ろから来た艇にも抜かれて最下位に沈んでしまうこともあるので、リスクを伴う技でもあります。反対にツケマイを仕掛けられた選手にとっては、「後ろから来るので分からないうちに嵌ってしまう」更に「一番怖いのが引き波に嵌って失速してしまうこと」と話しています。
どのような選手が得意にしているの?
高度なテクニックが必要なので、誰でもできる技ではありませんから、得意とする選手は限られています。特にA1選手の揃ったSG戦や優勝戦などでは内側の選手に意識されて決めにくいのですが、それでもツケマイを見事に決めて優勝してしまう数少ない選手を紹介しましょう。
山崎智也選手
先ず、山崎智也選手(46歳)。群馬県出身の人気レーサーで、ツケマイは勿論、テクニックも一流で、賞金ランク1位を獲得したほどの腕前。イケメンで女性人気も高い山崎選手もいつの間にかベテランになってしまいました。SG戦でも安定した成績を残しています。
毒島誠選手
同じ群馬出身の毒島誠選手(36歳)。とにかく抜群のピット離れでインを取りに行くスタイルが有名で、ターンスピードの速さで仕掛ける強烈なツケマイを持ち味としています。SG戦でも4度の優勝があり、今、賞金ランクも上位で一番脂の乗っている選手のひとりです。
興津藍選手
兵庫県出身の興津藍選手(39歳)もツケマイを得意とする選手の一人です。G1を2度制した経験があるもののSGの優勝経験はありません。ただ、2019年のオーシャンカップに初優出、これから期待される選手の一人です。
大山千広選手
また、紅一点の大山千広選手(24歳)も捲り、ツケマイを得意とする選手です。2018年の住之江競艇で豪華がツケマイでドリーム戦を制して有名になりました。母親が競艇選手の大山博美選手(2018年引退)で競艇初の母娘レーサーとしてデビュー時から注目されています。昨年は史上最年少賞金女王に輝いています。