競艇のレースは「SG、G1、G2、G3、一般戦」という5つのグレード(階級)に分かれていますが、これらに加えて、プレミアムG1(PG1)と呼ばれるレースがあります。

この記事では、PG1がどういう位置づけのレースなのか解説した上で、今後開催のPG1の概要・注目点などについて、まとめています!
プレミアムGI (PG1)とは
プレミアムGIとは、グレードで最もグレードの高いSGの次に位置するレースです。
従来、競艇レースは「SG、G1、G2、G3、一般戦」という格付けの順番でしたが、2014年から特定の5つのG1レースについては通常のG1の1つ上の格付けとすることになり、名称を「プレミアムG1」(PG1)とすることになりました。
PG1は全国発売されるほか、開催前後はSG同様に、メディアで大きく宣伝されます!
PG1の優勝賞金は1,000万円~1,500万円と通常のG1よりも高く、選手にとっては12月のグランプリに出場できるか否かを大きく左右するレースとなっています。
プレミアムG1は、勝率ランクや賞金ランクとは別に、「48歳以上の選手のみ」「30歳未満の選手のみ」「女子選手のみ」など、特別な出場条件を設けているため、色々な選手に出場・優勝のチャンスが与えられているのが特徴です。
普段、なかなか強豪のベテランに勝てない若手選手・女子選手なども、PG1であれば全員が同条件で揃うため、勝てるチャンスが大いに出てきます。
単なる強い選手同士の戦いとは一味違う勝負が見られることが、PG1の面白さです。通常レースとは異なる進行に基づく「組み合わせの妙」などもあり、その点でも楽しめるようになっています。
なお、こういった「普段とは違う形で行われる高額賞金の競走」は、他の公営競技でも開催されるようになってきています(オートレースにおける特別G1など)。
ここからは、5つのPG1の概要・注目点などについて、今後の開催順に紹介していきます!
2023年04月:マスターズチャンピオン
概要
競艇選手というのは非常に選手寿命が長いのが特徴です。これまでの最年長選手は加藤峻二選手の73歳ですが、選手寿命の短い競輪選手などと比べたら40代、50代で「まだまだ現役」という選手は沢山います。
そこで、ベテラン選手だけを集めて開催されるのが、このマスターズチャンピオン(名人戦)です。当初は名人戦競走と呼ばれていましたが2014年にマスターズチャンピオンと改称され格付けもPGIになりました。このレースの特徴は
「一定年齢以上でないと出場できない」という点です。当初は50歳以上でしたが、現在では「当年の4月1日時点で45歳以上」となっており、1回でもマスターズチャンピオンで優勝した選手は優先出場権があります。
出場選手は全部で52名ですので、残りは前年2月1日-当年1月31日の1年間で140走以上した選手の中から勝率の高い順番に選ばれます。従って、このレースは級は関係なくB1級であっても上位勝率であれば出場できます。
優勝賞金は1100万円と高額ですので、ベテラン選手にとっては格好の目標となっているレースです。
また長年の競艇ファンには、往年の名選手の名前がずらりと並びますので「とても懐かしい感じがする」と人気の高いレースでもあります。2000年に第1回の「名人戦競走」が行われた時にはファンファーレも昔のものが使われ、以前に行われていた「選手コール」も行われノスタルジックな雰囲気を高めた演出がされ沢山のファンを喜ばせました。
過去5年の開催
過去5年の開催レース場と優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 | (年齢) |
2022年(第23回) | ボートレース三国 | 上平真二 | 48 |
2021年(第22回) | ボートレース下関 | 原田幸哉 | 45 |
2020年(第21回) | ボートレース津 | 村田修次 | 46 |
2019年(第20回) | ボートレース宮島 | 今垣光太郎 | 49 |
2018年(第19回) | ボートレース福岡 | 渡邉英児 | 48 |
2023年の開催(第24回)
マスターズチャンピオンは2023年で24回目の開催となり、2023年4月18日(火)~23日(日)にかけて、ボートレース若松にて開催されます。
過去5年の結果を見ても分かると思いますが、優勝者は40代の選手ばかりです。やはり年齢が少しでも若い方が体力面で有利、ということもあるのでしょうが、全体的に勝率上位者はやはり40代後半の選手の方が多いので、必然的に出場者の大半が40代後半の選手に集中してしまう、と言う傾向があるのは否めません。
そこで「施行者希望枠」という施行者側が呼んで欲しい選手を2名、指名することができるようになっていますが
中々、優勝戦にまでは進めないようです。またマスターズチャンピオンは性別は関係ないので女性レーサーでも条件を満たせば出場できます。実際に鵜飼菜穂子選手、日高逸子選手が過去に出場しています。
日高選手は現時点で既に女子賞金ランキング10位につけており、勝率も相当なものになっていますので来年のマスターズチャンピオン戦に出場できそうです。日高選手は唯一、このレースで優勝戦にまで行った女子選手であり、人気の高さも相変わらずですので出場したら来年のマスターズチャンピオンでの目玉選手になるでしょう。
2023年08月:レディースチャンピオン
概要
レディースチャンピオン(女子王座決定戦)は、かつては「JAL女子王座決定戦」と呼ばれていた大会です。
日本航空が協賛していたのでこの名称が付けられていましたが、2014年より現在の呼び方に代わり、PG1に格上げされました。
名前の通り女子レーサーだけの大会ですが、賞金が1,100万円と高額であり、優勝者はSGであるボートレースクラシックへの出場権が与えられるため、女子レーサーにとって最高峰のレースの一つに位置付けられています。
出場資格は、「前年度の優勝者」「オールレディース競走の優勝者」「レディースオールスター競走優勝者」のほか、前年6月1日~当年5月31日までの1年間で100走以上の勝率上位の女子選手です。
そのため、このレースは級も関係なく、B1級であっても勝率が高ければ出場できます(但し、期間中に事故率0.40以上を出してしまうと選考除外)。
過去5年の開催
レディースチャンピオンの初開催は1987年と古く、2022年で36回目の開催でした。
2023年の第37回は、ボートーレース津で8月1日(火)~8月6日(日)に開催されます。
過去5年の開催レース場と優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2022年(第36回) | ボートレース丸亀 | 香川素子 |
2021年(第35回) | ボートレース浜名湖 | 遠藤エミ |
2020年(第34回) | ボートレース多摩川 | 平山智加 |
2019年(第33回) | ボートレース蒲郡 | 大山千広 |
2018年(第32回) | ボートレース桐生 | 山川美由紀 |
2022年(第36回)の結果
2022年(第36回)のレディースチャンピオンは、45歳の香川素子選手が初のG1制覇を成し遂げました!
女子賞金ランキング1位(全体では3位)の遠藤エミ選手が5月のフライングにより出場できなかった今回のレース。
ボートレース丸亀でのナイター開催であり、季節風の影響や、海水につき潮の満ち引きで水面の高さが変わることなどから、朝・昼の練習と夜の本番では勝手が異なるため「地元有利」とみられていました。
そして迎えた優勝戦の並びは以下の通り。1号艇は予選1位(得点率9.20)、準優戦も快勝のB1級・實森美祐選手。予想通り地元勢の躍進も目立ち、松尾夏海選手が4号艇、平山智加選手が6号艇でした。
- 1号艇:實森美祐選手(広島)
- 2号艇:大山千広選手(福岡)
- 3号艇:香川素子選手(滋賀)
- 4号艇:松尾夏海選手(香川)
- 5号艇:藤崎小百合選手(福岡)
- 6号艇:平山智加選手(香川)
待機行動では6号艇の平山選手が2コースに入り、1-6-2-3-4-5の順でスタートしましたが、ここで1号艇の實森選手がまさかのフライング。発売額約11億8,000万円のうち約10億2,000万円が返還になったようです。
結果、好スタートから最内を差していた3号艇の香川選手が2マークを回って先頭に躍り出、恵まれでの1着。2着は2コースに入っていた6号艇の地元・平山選手、3着は2号艇の大山選手という結果になりました。

香川選手は1997年のデビューから26年目で、待望のG1初制覇とのことです!
2023年09月:ヤングダービー
概要
ヤングダービーは、かつては「新鋭王座決定戦競走」と呼ばれていた、若手選手のみが出場可能な大会です。2014年から現名称になり、PG1に格上げされました。
この際、出場条件も「デビュー6年目未満の選手」から「30歳未満の選手」(当年9月1日時点)に変更され、さらに「イースタンヤング」と「ウエスタンヤング」という、このレースの前哨戦のレース(G3)が新設されました。
イースタンヤングはボートレース桐生からボートレース住之江までの所属選手が出場、ウェスタンヤングはボートレース尼崎からボートレース大村までの所属選手が出場。それぞれの優勝者は、ヤングダービーへの出場権が獲得できます。
さらに、前年度の優勝者、前年7月1日~当年の6月30日までの勝率上位者が出場可能です(いずれも30歳未満)。
優勝賞金は1,100万円と高額ですので、まだSGには出られない若手レーサーにとって大きな目標となっているレースです。
過去5年の開催
過去5年の開催レース場と優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2022年(第9回) | ボートレース多摩川 | 近江翔吾 |
2021年(第8回) | ボートレース徳山 | 羽野直也 |
2020年(第7回) | ボートレースびわこ | 磯部誠 |
2019年(第6回) | ボートレース三国 | 永井彪也 |
2018年(第5回) | ボートレース浜名湖 | 関浩哉 |
2022年の開催(第9回)
2022年で第9回ヤングダービーは、2022年9月20日(火)~25日(日)にかけて、ボートレース多摩川にて開催されました。
今回のヤングダービーを制したのは、ヤングダービーラストイヤーだった1993年生まれの近江翔吾選手(香川支部、107期)。デビュー11年10カ月、通算13回目の優勝で、待望のG1初優勝でした。
結局、近江選手は2日目から1位を継続、予選1位からの準優勝戦・優勝戦ともに安定した走りで6連勝フィニッシュ。スタートも7走連続ゼロ台でした。
今年のヤングダービーは多摩川での開催でしたが、ここはかつて今村豊選手がヤングダービーの前身の「新鋭王座決定戦競走」で優勝し、SGへのステップアップを果たした場所。
近江選手も新しい時代の幕開けを開く選手の一人に違いありません。

なお、2022年のイースタンヤング・ウェスタンヤングは、宮之原輝紀選手と石丸海渡選手がそれぞれ優勝していました。
2023年12月:クイーンズクライマックス
概要
クイーンズクライマックスは、2012年より開始されたG1レース「賞金女王決定戦競走」が前身で、2014年に現在の名前に変更され、PG1に格上げになりました。
レースの位置付けとしては、かつての賞金王決定戦(現・グランプリ)の女子版であり、レースの進行形式も賞金王決定戦に準拠した形となっています。
日程はグランプリ後、大晦日に優勝戦が行われる年末開催です。4日間の短期決戦ですが、優勝賞金は1,500万円と、女子レーサーのみの大会としては最高額になります。
出場のための選考基準は以下の通りでです。
- 第1選考:1月1日~10月31日の期間で、獲得賞金ランク上位42名を選抜
- 第2選考:1月1日~チャレンジカップ終了日の期間で、獲得賞金ランク上位12名を選抜(但し、第1選考で選抜された選手は除く)
- 第1選考と第2選考を合わせた54名のうち、第2選考時における獲得賞金ランク上位12名がクイーンズクライマックスに、それ以外が「クイーンズクライマックスシリーズ戦」に出場
「クイーンズクライマックスシリーズ戦」は優勝賞金100万円なので、獲得賞金ランクで上位12位以内に入ってクイーンズクライマックスに出ることが重要になります。
レースは、開催場の勝率上位モーター12機を各選手に割り当てる抽選から始まります。そして12人で3日間のトライアル戦を戦い、上位6名が4日目の優勝戦に進むことができます。
そのため、優勝戦に進むには、最低でも1回、1着を取ることが絶対条件と考えられます。
過去5年の開催
過去5年の開催レース場と優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2022年(第11回) | ボートレース住之江 | 田口節子 |
2021年(第10回) | ボートレース福岡 | 田口節子 |
2020年(第9回) | ボートレース浜名湖 | 平高奈菜 |
2019年(第8回) | ボートレース徳山 | 今井美亜 |
2018年(第7回) | ボートレース平和島 | 松本晶恵 |
2022年の開催(第11回)
2022年の第11回は住之江で開催されましたが、前年の福岡に続いて、田口節子選手が大会初の二連覇を達成しました。
田口選手は2021年度に史上33人目(女子選手では初)の24場完全制覇を達成しましたが、実は最後まで勝っていなかったのが2021年のクイーンズクライマックス開催地の福岡競艇場でした。
田口選手にとっては苦手意識の強い競艇場だったことに加えて、1号艇が平高奈菜選手、4号艇が遠藤エミ選手という決勝戦でしたが(田口選手は2号艇)、スタートで半艇身ほど平高選手の前に出て、まくりを決めての優勝でした。
そして迎えた2022年の優勝戦。1号艇は再び平高奈菜でしたが、田口選手が2コースから差して勝利。誰も成し遂げていなかった大会連覇を達成し、再び頭上にティアラを輝かせました。
「緊張もしなかったし、2号艇だったので、楽しもうと思って一日普段通り過ごせた」とのコメント。若手の台頭も著しい女子ボートレース界ですが、41歳の田口選手が変わらない存在感を示す結果となりました。

女子の第一人者と呼ばれて久しい田口選手。連覇したことは「ご褒美みたいな感じ」と振り返っていました。
2024年01月:ボートレースバトルチャンピオントーナメント
概要
ボートレースバトルチャンピオントーナメント(BBCトーナメント)は、2019年に新設された新しいレースです。
48人の選手が出場できますが、その出場資格は以下の通りです。
- 前年度本競走の優勝者
- 前年12月までの9つのSG競走の優勝者
- 4つのプレミアムG1競走の優勝者
- 3つのG2競走の優勝者及び前年開催のファン感謝3Daysバトルトーナメントの優勝者
- 前年10月までのSG競走、及び3つのプレミアムG1競走のあっせん決定時における、選出基準に基づく各競走の選出上位15名の内、過去9か月の勝率上位者
要は、「前年度にSGかPG1で優勝した選手」は全員出場。残りの枠は成績上位者で埋めるという形です。
そして、このレースの最大の特徴は、「トーナメント形式である」という点です。
通常のレースでは、まず予選が行われ、予選の得点率の上位者によって行われる準優戦の1・2着の選手が決勝戦に進む・・・という仕組みで進行していきます。
しかし、このBBCトーナメントは、全レースで「1~3着の選手だけが勝ち上がれる」形式です。開催は4日間で、以下のように勝ち負けがついていきます(解説図はこちら)。
- 1日目:出場者48人で8レース(6人×8レース)を行い、4~6着になった半分の選手が脱落して24人が勝ち上がり
- 2日目:24人で4レース(6人×4レース)を行い、同様に半分の選手が脱落して12人が勝ち上がり
- 3日目:12人で2レース(6人×2レース)を行い、同様に半分の選手が脱落して6人が勝ち上がり
- 4日目:残った6人の選手で決勝戦
つまり、全レースが一発勝負の「負けたら終わり」であり、通常のレースのように得点が十分だから安心・・・とはいかず、激しいガチンコレースが展開されます。特に3着争いは熾烈を極めます。
途中で脱落してしまった選手は「勝ち上がり戦」には出られませんが、4日目まで一般レースで走れますので、それなりに賞金は稼げます。
短期決戦にも関わらず、優勝賞金は1,100万円と高額なので、選手にとっては非常に美味しいレースです。
元々は11月に行われていましたが、2022年大会からグランプリ・クイーンズクライマックスの優勝者にも出場権が与えられることになり、そうなると両レースが行われる年末を過ぎてからでないと出場選手が決まらないので、第4回から1月開催に変更となりました。
また、このレースに限り「準優勝戦」「優勝戦」ではなく、「準決勝」「決勝戦」と表記されます。点数や勝率とは関係ない「勝ち上がり方式」なので、このように表記されるのだそうです。
点数・勝率は無関係となると、決勝戦での枠順はどうなるのだろう?と思われるかもしれませんが、これはなんと「あみだくじ」で決定されます。
この「あみだくじ」は、3日目の全レース終了後に競艇場のメインステージで行われ、テレビ中継もされるレースの名物になっています。毎年少しづつルール改正も加えられるので、見ていて非常に面白いイベントとなっています。
また、このレースは「バトルチャンピオン」という名称ですので、優勝選手にはチャンピオンベルトが贈られます。
過去3年の開催
過去4年の開催レース場と優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2023年(第4回) | ボートレースびわこ | 松井繁 |
2021年(第3回) | ボートレース鳴門 | 丸野一樹 |
2020年(第2回) | ボートレース若松 | 寺田祥 |
2019年(第1回) | ボートレース平和島 | 田村隆信 |
2023年(第4回)の結果
4回目のBBCトーナメントは、2023年1月12日(木)~15日(日)にかけて、ボートレースびわこにて開催されました。
3日目の14日(土)終了後、準決勝戦を勝ち抜いた6人により、決勝戦の枠番を決めるあみだくじが実施されました。1号艇を獲得したのは、53歳の絶対王者・松井繁選手。
そして迎えた15日(日)の決勝戦。松井選手はインからトップスタートを見せ、安定の逃げで勝利。賞金1,100万円とチャンピオンベルトを獲得しました!
優勝後、松井選手は「久しぶりに大きいレースを勝てていい感じ。普通のG1の感じで走っていたが。ファンの声援を聞くとSGっぽいね。年を取ってSGを取りたいと思っていたので、いい予行演習になった」とコメントしていました。
なお、昨年優勝の地元・丸野一樹選手は2着、3着には6号艇・池田浩二選手が入りました。

松井選手は、59度目のG1優勝(3年7カ月ぶり)を、プレミアムG1であるBBCトーナメント勝利で飾りました(本大会初制覇)。