勝率上位選手が出場する、最も歴史と権威のあるSG競走であるボートレースダービー。
2023年は、10月24日(火)〜10月29日(日)にかけて、「ボートレース蒲郡」で開催予定です!

この記事では、ボートレースダービーのレース概要や過去の優勝者、直近の優勝者、注目選手のレース結果などをご紹介します。
※他のSGの開催日程・レース結果についてはこちらの記事をご覧ください。

ボートレースダービーとは
ボートレースダービーは、「全日本選手権競走」とも呼ばれ、毎年10月下旬に開催されています。
第1回大会は1953年に開催されており、最も歴史と権威のあるSG競走です。第61回大会より「ボートレースダービー」の通称になりました。
5大SG競走である「GRANDE5」(①ボートレースクラシック、②ボートレースオールスター、③ボートレースメモリアル、④ボートレースダービー、⑤グランプリ)の1つでもあります。
出場資格は、前年度の優勝者、前年度のグランプリ優勝戦出場者6名、直近のSGであるボートレースメモリアル優勝者、前年8月1日~7月31日の勝率上位者など。
勝率上位の選手が出場できるレースと覚えておけば良いでしょう。
賞金金額は、ボートレースの中で2番目に高い3,900万円になります。
2023年(第70回)の出場予定選手
2023年8月1日、日本モーターボート競走会は、2023年(第70回)のボートレースダービー出場選手を発表しました。
前年度優勝者の馬場貴也選手以下、選考順トップ10は以下のメンバーです。
順位 | 登番 | 選手名 | 支部 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
前年覇者 | 4262 | 馬場貴也 | 滋賀 | 7.89 |
GP優出 | 4586 | 磯部誠 | 愛知 | 7.41 |
GP優出 | 4459 | 片岡雅裕 | 香川 | 7.11 |
GP優出 | 4524 | 深谷知博 | 静岡 | 7.04 |
GP優出 | 3779 | 原田幸哉 | 長崎 | 6.85 |
ボートレースメモリアル(福岡)優勝者 | ||||
7位 | 4320 | 峰竜太 | 佐賀 | 8.63 |
8位 | 4418 | 茅原悠紀 | 岡山 | 8.08 |
9位 | 3941 | 池田浩二 | 愛知 | 8.02 |
10位 | 4238 | 毒島誠 | 群馬 | 8.02 |
ここで注目は、選考勝率が8.63でトップの峰竜太選手。2021年グランプリ以来となるSG復帰戦となり、動向が注目されます。
※なお、白井英治選手、久田敏之選手、秋山直之選手、椎名豊選手らは、スタート事故による辞退期間中のため、選出除外となっています。
過去5年の優勝者
ボートレースメモリアルは2023年で70回目の開催となり、過去5年の優勝者は以下の通りです。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2022年(第69回) | ボートレースとこなめ | 馬場貴也 |
2021年(第68回) | ボートレース平和島 | 平本真之 |
2020年(第67回) | ボートレース大村 | 深谷知博 |
2019年(第66回) | ボートレース児島 | 毒島誠 |
2018年(第65回) | ボートレース蒲郡 | 守田俊介 |
参考:https://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/record/list?category=0200
第69回ボートレースダービーの結果
ボートレースで最も古い伝統と格式を持つボートレースダービー。
ダービーの優勝者は、彦坂郁夫・野中和夫・今村豊・植木通彦と競艇界のレジェンドが名を連ねており、競艇選手にとっては賞金とは別に手に入れたい栄誉でもあります。
第69回の2022年のダービーを制したのは、「スピードマスター」の異名を持つ馬場貴也選手でした。
注目選手の結果
今回のボートレースダービーの参加選手は52名。女子レーサーは田口節子選手、1人だけでした。
舞台となったボートレースとこなめはインが強い競艇場です。初日はなんと、12R全てが1号艇の勝利となりました。その後のレースも1号艇が強く、ダッシュ勢は苦戦を強いられることに。
常滑の特性を熟知しているベテランの江口晃生選手は、予選で前つけ勝負に出ましたが、残念ながら失敗。
唯一の女子選手、田口節子選手も準優戦まで進みましたが、5着に終わりました。
絶好調の菊地孝平選手は、まくりを決めて、3-3-1-1-1という成績で、予選をトップ通過。準優戦も万全のイン逃げを決めて、優勝戦の1号艇を確保しました。
馬場選手は、5-2-1-1-2-3とまとめて予選を2位通過して準優戦に進み、1号艇で危なげなく勝利、優勝戦の2号艇を確保しました。
10Rの準優勝戦での出来事
10Rの準優勝戦は、1着が田村隆信選手、2着が濱野谷憲吾選手という結果でしたが、少しアクシデントがありました。
1号艇の田村選手は、1マークでうまく回ってトップを確保。2号艇の河合佑樹選手が追う展開になりましたが、6号艇の宮之原輝紀選手がうまく内側を差し、ストレートで河合選手の2号艇に追いつく展開に。
そして2マーク。宮之原選手は、河合選手の2号艇に強烈なダンプを仕掛けて河合選手を転覆させてしまいました。宮之原選手は競走妨害で失格になりました。
幸い、河合選手に怪我はありませんでしたが、これに怒ったのが「静岡のドン」であり、河合選手の先輩である菊地選手。準優戦の勝者インタビューで10Rに触れ、「佑樹が凄くいいレースをして頑張ってたんですけど・・・ちょっと残念です」と異例のコメント。
前期、ルーキーにもかかわらず勝率8点台という成績を残し、SGに初出場した宮之原選手。相当な実力の持ち主ですが、これは「やってはいけないダンプ」でした。恐らく、レース後に相当にきついお叱りを受けたことと思われます。
優勝戦の結果
そして迎えた10月30日の優勝戦。菊地選手が1号艇、馬場選手が2号艇でした。
菊池選手は実は、馬場選手が成績を伸ばすことになったウィリーターンの達人で、その旋回スピードの速さもそれによるものだそうです。
スタートは横一線で1マーク勝負となり、菊池選手は渾身のウイリーターンで旋回をかけてきました。本来これで勝負あったはずなのですが・・・
なんと馬場選手は、90度という最も引き波の影響を受けない角度で差しを入れ、菊池選手と同様、可能な限り重心を後ろにかけてウィリーターンをかけたのです。
その結果、内側の馬場選手が菊池選手に軽く接触し、半艇身ほど前に出ました。たとえ半艇身でも前に出た方が有利なのが競艇です。
そして、直線スピードならスピードマスター・馬場選手は誰にも負けず、そのまま一人旅。見事ダービー制覇を決めました。
この1マークの争いを見ていたかつての競艇王・植木通彦氏は、「菊池のターンは完璧だった。けど、馬場は絶妙な角度で差しを入れ、更に旋回スピードでも菊池を上回った。素晴らしいレースだった」と語っています。
ちなみに、2着かと思われた菊池選手でしたが、4号艇の山口剛選手に2マークでごく軽いダンプを受けて膨らんでしまい、3着となりました。
現在、賞金ランキング2位の山口選手。本当に「上手い」選手であり、山口選手が出ているレースでは、山口選手の2着付けで総流しで買うと、案外に美味しかったりします。
馬場貴也選手について
馬場貴也選手は、日本最速コースレコードを出し、さらにその記録を自分自身で塗り替えるという、自他ともに認めるスピードマスターですが、かつては「SGどころかG1でも優勝できないのは何故なんだろう」と深く悩んでいたそうです。
ある日、先輩である丸岡正典選手(SG2回優勝)に、「お前は艇の前に乗りすぎ。もっと後ろに乗らないと駄目」と言われたそうです。そして艇の後ろに乗って走ってみたところ、重心が艇の後方に行き、前の舳先が少し上がるようになり、ターンの感覚が全く違ったとか。
このように艇の後方に重心をかけ、舳先を上げてターンするテクニックは、「ウィリーターン」と言います(バイクが前輪を持ち上げて走っているのと似ていることから)。艇の底面と水面の接する面積が小さくなるため摩擦が減り、艇の向きを変えるのに都合が良く、トップ選手の間ではよく知られた技術でした。
それから馬場選手はウィリーターンを練習し、実際に試合でも使い始めました。そして、2018年のチャレンジカップでSG初制覇(競艇選手になって15年目の快挙でした)、2019年には年末のグランプリシリーズで優勝を果たしました。
そして、今回2022年のボートレースダービーの優勝です。賞金ランキングでもトップとなり、年末のグランプリも確定しました。
馬場選手は現在38歳。おとなしくて優しい性格ではありますが、艇の整備力と操作力は人並み外れたものがあります。もしかしたら、これから「馬場貴也の時代」が始まるのかも知れません。