競艇では、7月に「ボートレース甲子園」という、一風変わったレースが開催されます。
甲子園といえば、プロ野球・阪神タイガースの本拠地で、高校野球のメッカとして知られています。
「え、競艇なのに甲子園?」と思った方も少なくないでしょう。
そう、このレースは、全国47都道府県の代表のボートレーサーが集められ、ナンバーワンを目指す開催なのです!
2024年は、7/10(水)~7/15(月)の日程で、ボートレース津で開催されました。
この記事では、ボートレース甲子園の概要、これまでの各都道府県の代表選手、レースの楽しみ方などを解説いたします!
ボートレース甲子園とは
ボートレース甲子園の正式名称は「全国ボートレース甲子園競走」といい、2019年に令和に元号が変わってから新設されたG2レースです。
甲子園で開催される高校野球と同様、選手の出身都道府県に基づき、全国47都道府県の代表が選ばれてレースを行います!
開催時期は毎年7月で、出場選手は日本モーターボート競走会が選びます。
2024年(令和6年)の第6回の出場選手はこちらに、2023年(令和5年)の第5回の出場選手はこちらに一覧がありますので、まずは「自分の地元の代表は誰だろう?」と確認してみましょう。
なお、2023年の第5回は尼崎競艇場で行われましたが、「甲子園の近くの尼崎で行われるのか」と思いきやそうではなく、各場の持ち回りです。
過去5年の優勝者
上に書いた通り、2019年に令和に元号が変わってから新設されたレースです。
そのため、令和〇年=開催回であり、過去5回の優勝者は以下の通りです。
2024年(第6回)の優勝戦は、群馬代表の1号艇・毒島誠選手がインからトップスタートを決め、2021年(第3回)以来の優勝を決めました。
開催回 | 開催レース場 | 優勝者(代表都道府県) |
2024年(第6回) | ボートレース津 | 毒島誠(群馬県) |
2023年(第5回) | ボートレース尼崎 | 片岡雅裕(高知県) |
2022年(第4回) | ボートレース下関 | 深谷知博(静岡県) |
2021年(第3回) | ボートレース丸亀 | 毒島誠(群馬県) |
2020年(第2回) | ボートレース三国 | 峰竜太(佐賀県) |
7月に新設された理由
では、なぜ最近になって、このようなレースが7月に新設されたのでしょうか?
ボートレーサーは、A1・A2・B1・B2の4階級にクラス分けされていますが、A級の選手は基本的にグレードレースへの斡旋が中心になっています。
しかし、7月はSGレースのオーシャンカップ以外、グレードレースの開催がなく、A級選手の「月3回の斡旋先」として一般戦が当てられることも多かったとか。競走会も頭を悩ませていたそうです。
なお、7月にグレードレースが少ないのは、屋外が暑いうえ、夏休み・盆休み前ということもあり、客足が減少しがちになるため、コスト(賞金など)が高いグレードレースを開催しても、それに見合う売上が上がらないからと言われています。
この点と、「A級選手に月3回の斡旋をしなければならない」こととのバランスで、賞金額が比較的少ないG2のレースを7月に新設することにしたということのようです。
せっかくなので面白い開催を
しかし、単にG2のレースを増やすだけでは面白くありません。せっかく新しく作るのだから、何か特色を持たせよう・・・と競走会は考えたようです。
そこで参考にしたのが、日本国民が伝統的に愛するスポーツイベントである夏の高校野球。
高校野球にあやかって、全国47都道府県の代表を集めてレースをすれば話題性が高いと考えられたようで、「甲子園」というネーミングになったようです!
ファンサービスという意味合いも強い開催のようですね。
B級選手にもメリット
また、選手を「出身都道府県別」でみた場合、競艇場が近くにある地域は選手数も多いですが、競艇場のない道府県では競艇の知名度が低く、極端に選手数が少なくなります。
その結果、本来はグレードレースに出場できないB級選手もボートレース甲子園ならG2に出られる可能性があることになり、モチベーションになる可能性も考慮されました。
優勝賞金の470万円は、賞金ランキングでしのぎを削るトップレーサー達にとってはそれほど大きな額ではないですが、下位のB級選手にはほぼ年収に匹敵する金額です。
たとえ優勝できなくても、G2の賞金は一般戦よりも高額。B級レーサーにとってはまたとない稼ぎ時になり、モチベーションになることでしょう。
いくつかの道府県では、B1級選手も代表として出場しています。A級選手にとっては「G2であれば選出されなくても別に気にならない」こともあり、代表の選出についてイザコザになることもありません。
ボートレース甲子園の楽しみ方!
高校野球の場合、自分の出身校・出身地域・住んでいる都道府県のチームを応援し、それが負けてしまうと、今度は同じ地方のチームを応援します。
それと同様に、ボートレース甲子園では、自分の出身あるいは住んでいる都道府県の代表の選手を「弱いけれど地元なので」と舟券を買ってくれることが期待されています。
通常のレースでは勝ちそうな選手の舟券を買うのが当たり前ですが、普段とは全く違う基準で舟券を買うことはファンにとっても新鮮でしょうし、思わぬ当たり目に遭遇する可能性もあることでしょう。
また、実力差がある組み合わせも多いので、普通に強い選手が勝つ可能性が高いレースもそれなりに多いように思います。自分の「推し選手」が出ていないレースでは、こういったレースで勝ちに行くのも一興ですね!
選手層の薄い道府県
競艇場は、群馬県の桐生競艇場が最北で、それより北には存在しません(場外売場もほとんどありません)。
そのため、東北・北海道などでは競艇に対する認知が薄くなりがちのようで、出身選手も多くありません。
例えば、青森代表の鹿島敏弘選手、秋田の高橋直哉選手、山形の多田有佑選手は、2024年で6年連続6回目の出場でした。
また西日本でも、和歌山県・鳥取県は出身選手がほとんどいない空白地域で、鳥取県は村岡賢人選手が選出され続けています。和歌山県は「代表者なし」の期間もあります。
こういった「選手層の薄い道府県」出身のファンにとっては、普段のレースではまず買わない選手でも、地元の代表選手を応援したくなってしまいますよね!
まとめ
お客さんには普段と違う目線で選手を応援してもらえ、B級選手にはグレードレースへ出場するモチベーションを与え、A級選手には閑散期に賞金額を抑えつつ斡旋先を作るという、様々なメリットがあるボートレース甲子園。
地方競馬・競輪・オートレースが売上を減らすなか(競輪などでは競輪場を廃止して選手数も抑えています)、ボートレースでは売上が増え続けています。
その差は、こういった上手い企画を考えて実行に移す、発想力・行動力のおかげかもしれませんね。
この記事を読んで、少しでもボートレース甲子園に興味を持っていただければ幸いです。何ごともマンネリ化を防ぐ工夫は大切ですね!