この記事では、競艇界の女子トップレーサーの1人である遠藤エミ(えんどう・えみ)選手について取り上げます。
この記事では、女子ボートレーサー初のSG制覇を成し遂げた遠藤選手について、その強さの秘密に迫っていきます!
遠藤エミ選手について
遠藤選手は1988年生まれ。
遠藤エミ選手の出身は滋賀県の蒲生郡日野町(位置は、琵琶湖からみて右下くらい)ですが、祖父母がブラジル移民だったことから、3歳までブラジルで過ごしていたようです。
滋賀県立八幡商業高等学校を卒業後、競艇の道に入りました。
登録期は102期(登録番号は4502)で、上野真之介選手・前田将太選手などが同期です。
支部は出身の滋賀支部に所属しており、ホームはびわこ競艇場。
2008年5月、びわこの一般戦でデビュー。9月には初勝利し、翌2009年12月に初優出。2012年11月、鳴門で開催された一般戦で初優勝します。
その後、順調に実力を伸ばし、2017年12月にはクイーンズクライマックスでG1初優勝を決め、賞金女王となりました。
なお、レディースチャンピオンも合計3回優勝しており、G1は通算4回優勝しています(田口節子・山川美由紀選手と並ぶ女子トップタイ)。
2021年~2023年にかけて3年連続の賞金女王(通算4度目)であり、名実ともに女子トップレーサーとして君臨しています!
2022年のボートレースクラシック
2022年3月21日、遠藤選手は、競艇界にその名を残す歴史的快挙を成し遂げます。
大村競艇場で開催されていたSG・ボートレースクラシック。
女子選手として初のSG予選トップ通過を果たし、準優戦も1着でゴールしていた遠藤エミ選手。
女子選手としては、寺田千恵・横西奏恵(引退)の両選手に続く、史上3人目のSG優出でした。
そして迎えた3月21日の優勝戦。
1号艇から出走した遠藤選手は、コンマ07のスタートを決め、先マイから見事な逃げをみせて優勝。
競艇史上、これまで約530人(当時)の女子レーサーがいましたが、遠藤選手は誰も成し得なかったSG制覇を達成しました。
「歴史に名を刻みたいと思っていた。今までにないぐらいの緊張だったけど、緊張を感じながら逃げないようにと。エンジンは抜群だったので、本当に自分がミスだけしなければと思っていました」とコメントしていました。
姉・遠藤ゆみ元選手
ちなみに、遠藤エミ選手のお姉さんは遠藤ゆみ(油浦ゆみ)さんといい、元ボートレーサーです(引退)。妹より後の107期で、同じく滋賀支部所属でした。
遠藤ゆみさんは、高校生の頃から競艇選手を目指していましたが、一度は断念して働いていたそうです。その後、年齢制限の変更をきっかけに合格、2010年11月にデビュー。
2017年8月開催のG3では、2R・3Rと遠藤エミ選手と姉妹での連勝が話題になりましたが、残念ながら2019年に引退。
優出・優勝はありませんでしたが、通算34回の1着という成績でした。
妹の遠藤エミ選手に競艇を進めたのは、他ならぬ姉の遠藤ゆみさんでした。
お姉さんなくしては、競艇史に名前を刻んだ遠藤エミ選手は誕生しなかったわけです。
遠藤エミ選手は、お姉さんの思いも背負って走っているわけですね。
遠藤エミ選手の強さの秘密
そんな遠藤選手ですが、以下では、彼女の強さの秘密に迫ってみます!
メンタルの強さ
遠藤選手はインタビューで、「もう一人の自分がいて、常に自分を冷静に分析している」と語っていました。
競艇界は上下関係が厳しく、自分より経験の浅い選手にプレッシャーをかけてくる選手も多いようです。
遠藤選手もよくプレッシャーを感じるそうですが、「『あ、今、私はプレッシャーかけられてるんだな』と、もう一人の自分が客観的に状況判断をしてくれる」ため、冷静でいられるとか。
レース開催中はずっと同じ顔ぶれで過ごすわけですから、こういった人間関係をうまくさばくことは予想以上に重要になります。
遠藤選手は受け流すのが得意な性格のようで、それが自然にメンタルコントロールにもつながっているようです!
競艇に限らずスポーツの世界では、技術・フィジカル面で自分より上の選手は大勢いますが、成功を分けるのはメンタルコントロールと言われますよね。
ペラの技術
平高奈々選手が以前、「エミはいつもペラ(プロペラ)を叩いている」とコメントしていました。
ペラの形が良いと、スタートから1マークまでのスリットの伸びが良くなり、更にマークを回ってからの立ち上がり加速も速く、直線での伸びも大きくなります。
ペラの状況でタイムが1秒~2秒も変わるため、競艇選手にとってペラは命の次に大事なものとも言われています。
かつては、選手が自前のペラを使用できる「持ちペラ制」でしたが、現在は抽選で割り当てられたモーターに付属しているペラを自分で調整します。
選手は普段から、自分に合うペラの形を追求しています。一番良いと思った「エースペラ」をペラゲージというゲージに取り、それを元に、割り当てられたペラを調整します。
なお、理想的なペラに仕上げても、レースを走るうちにペラは水の抵抗で形状が変わってしまい、形が崩れてしまいます(これを「ペラが開いた」と言います)。
全力で走ると、だいたい2周程度でペラは開いてしまうそうです。
1日1回走りなら良いのですが、2回走りの場合、レース後すぐに次に備えてペラ調整をする必要があります(SG常連クラスになると30分程度だが、普通の選手は数時間かかるとか)。
遠藤選手が「いつもペラを叩いている」のは、こういった理由からです。遠藤選手のペラ調整技術は、恐らく女子選手の中でもトップクラスと思われます。
なお、本人はエースペラだと思っていても、実はもっと良い形があるかもしれません。一人で試行錯誤するのは限界があり、そんな時に頼りになるのが、師匠や支部の先輩です。
ペラ作りの上手い先輩が、同支部の若手のペラをサポートすることはよくあるようです(ルール違反ではないが、他の選手への配慮もあるため、公表はされない模様)。
滋賀支部のホーム・びわこ競艇場は、日本で一番標高が高い場所にあり、気圧が下がりエンジンのふけが悪くなります。滋賀支部の先輩のペラ理論は、そういった悪条件を克服するための技術が詰まっているに違いありません。
遠藤選手の師匠は深井利寿選手ですが、所属する滋賀支部には、「スピードマスター」の名を持ち、日本でも指折りのペラ巧者であるトップレーサー・馬場貴也選手が支部長を務めています。
気さくな性格で、後輩の面倒見が良いことで知られている馬場選手。ペラについても、アドバイスをしてくれることでしょう。
その点、遠藤選手は、他支部の女子選手に比べて、優れたエースペラを手に入れやすい環境なのかもしれませんね。
身体能力の高さと運動神経の良さ
元プロ野球選手の方が、初めて競艇場へ訪れた際、たまたま女子戦をやっていたそうです。
競艇のことは何も知らなかったのですが、あるレースの展示走行を見て、「あの選手は強いんじゃないかな」と思ったのが、遠藤エミ選手だったとか!
いわく、「ターンからの加速が、他の選手と全く違うように見えた」そうです。
特にグレードレースではモンキーターンで回るのが常ですが、ターンのポイントで足で艇の内側を蹴って、艇の角度を急激に変える必要があります。この蹴り足が弱いと、艇の角度が思ったほど変わらず、ターンが失敗してしまいます。
女子選手の場合、どうしても男子ほど強い蹴りが出来ない選手が多いですが、遠藤選手の蹴り足は相当に強く、タイミングもばっちりです。これは運動神経が良く、身体能力も男子に引けを取らないことを示しています。
ちなみに、遠藤選手は学生時代はソフトボールの選手で、守備位置はサードでした。サードというのはホームベースに近く、ノックの時には強く早い球が瞬間的に飛んでくるので、恐怖感を感じる守備位置です。
しかし遠藤選手は、そのサードでのノック練習を、「すごく怖いのが、とても楽しかった」と語っています。実は、この「怖いのが楽しい」というのは、運動神経に優れている人達に共通する感覚だそうです。
武道で心・技・体と言いますが、遠藤エミ選手は心(メンタル)・技(プロペラ技術)・体(運動神経と身体能力)とも優れており、これが彼女の強さを支えていると言えますね!
遠藤エミ選手のプライベート
そんな超実力派・遠藤エミ選手、プライベートについてもファンは気になるところですが、2024年現在で結婚などはされていないそうです。
ちなみに、遠藤エミ選手は歌手のあいみょんの大ファンで、コンサートにもよく通っており、宿舎でも聞いているとか。歌声や歌詞など、表現の仕方が好きとのことです!
ちなみに、女子初SG制覇を達成したボートレースクラシック直前に聞いていた曲は、あいみょん「さよならの今日に」だったそうです!