競艇選手は約1,600人いますが、最上位のレースであるSGに常連として出場できる選手は数えられる程度であり、その技術レベルは異次元の高みに達しています。
そして、そんなSG常連選手同士のつばぜり合いの凄さは、ファンの想像をはるかに超えています。
今回は、そんなトップ選手達のしのぎ合いの中で、2人のベテランレーサー・池田浩二選手と山口剛選手の戦いについて取り上げます!
この記事では、SG常連選手である池田選手と山口選手のプロフィール、そして両者の熾烈な戦いについてご紹介いたします!
池田選手と山口選手について
まず、両者のプロフィールを簡単な表にまとめてみました(2024年11月時点)。
池田浩二選手はSGを2ケタ優勝しており、愛知支部のスーパースターとして知られています。
勝率は常時8点台で、艇界広しといえど、この水準の勝率を安定して残せる選手は多くありません。
一方、山口剛選手は、池田選手より少し後輩ですが、四十路を超えた広島支部の大ベテラン。
SG優勝は1回のみですが(2010年の総理大臣杯=ボートレースクラシック)、グレードレースの2~3位が非常に多く、賞金ランキング上位を常にキープ。
高校生になる前からボートレーサーを目指し、モーターについて学ぶため沼田高校の機械科に進学したというエピソードを持つ選手です。
池田選手にとっての山口選手
競艇はレースがグレード別に分かれているため、同レベルの選手と一緒に走る機会が多くなります。
トップレベルのSG常連選手ともなれば、常に同じような顔ぶれで戦っているといっても過言ではありません。
よく一緒に走るライバルには、自分にとって相性の良い選手・悪い選手が存在するわけですが、池田選手にとっては、山口選手がまさに相性の悪い「天敵」にあたります。
華々しい戦績の池田選手ですが、2022年6月のグランドチャンピオン優勝以降、2024年2月の東海地区選手権(G1)の優勝を除くと、一般戦しか優勝していません。
グレードレースは運も味方しないと勝てないのもありますが、他の理由に、天敵ともいうべき山口選手の存在があります。
それでは、ここで両選手の星取り表を見てみましょう。
なんと、2023年8月末~2024年6月まで、池田選手は山口選手に常に前を走られていました!
特に、2023年10月のウェイキーカップ(G1)優勝戦などでは、池田選手は1号艇をゲットしていましたが優勝を奪われています。
なお、最近では池田選手の対抗策が効果を上げているようで、2024年6月のグランドチャンピオン準優戦では山口選手を逆転しています。
では、山口選手が池田選手を手玉に取れていた理由、さらに池田選手がそれをどう打ち破ったのかをみていきましょう。
池田浩二選手の戦法
池田選手といえば、「ウィリーターン」(舳先を持ち上げて回るモンキーターン)の達人として知られています。
このターンは舟の底面が水面に当たる面積が少なく、摩擦が小さいので、より鋭角的に舟の角度を変えられ、上手く決められると抜くことは容易ではありません。
さらに、池田選手のターンラインは、意図的に頂点をずらしてターンマークぎりぎりを狙っていくため、付け入るのは簡単ではありません。
そもそも、頂点をずらしたターンラインを取るのは非常に難しく、「頂点をどこに持ってくるか」の感覚が掴めていないと、ターンマークに激突しかねません。
このライン取りで、しかもウィリーターンで来られたら、通常のラインを走る選手はとても適いません。
池田選手は、一般戦では敵なし状態。その驚異的な勝率は、このテクニックのおかげといっても良いでしょう。
しかし、この戦法には、思わぬ抜け穴がありました。
山口剛選手の戦法
山口剛選手の持ち味も、池田浩二選手と同様、頂点をずらしたターンラインでの突っ込みです。
山口選手はSG・G1での優勝は多くありませんが、獲得賞金ランキングでは常に上位にいます。
これは、いわゆる道中での「抜きの技術」に優れているからなのです。準優戦・優勝戦などは2着~3着でも賞金が高く、それで稼いでいるのです。
「抜きの技術」は、「着取りの上手さ」などとも表現されますが、その正体は、頂点をずらしたターンラインの極限までの追及です。
そして、頂点をずらしたターンラインでも、池田選手が下図の赤ラインを取るとしたら、山口剛選手は青ラインで突っ込んでくるのです。
すると、ターンマークでは、ぎりぎりで青ラインの方が内側に入るため、この攻防で前の艇を抜き去るというわけです。
しかし、これは簡単なことではありません。赤ラインもギリギリの位置なのに、それより更に頂点をずらすと、ターンマークに激突する危険も増してしまいます。
赤ラインと青ラインの頂点の差は僅かしかありません。
山口選手のすごい所は、前艇のターンラインを予想して、それより少し右にずらしたラインを取ってくる点にあります。
ちなみに、1マークはターンマーク周辺に余裕がないので、このような頂点ずらしのラインは取れないことがほとんど。つまりこれは、2マークに絞った技なのです。
この山口選手の妙技(?)に、池田選手は、まんまとやられてしまっていました。いつも山口選手に2マークでインから差されてしまうのです。
インから差しを食らうと前をふさがれて行き場がなくなり、さらに着を落とすことになります。
この点は池田選手も相当意識しており、頂点の位置を少し右に寄せるなど対策をしていたようですが、山口選手はさらに右に持ってくるため、やはり内に入られてしまっていました。
これは山口選手のターン技術が、池田選手と同等レベルであることの証明でもありました。
同じレースに出るとロクな結果にならず、池田選手にとって山口選手はまさに「天敵」でした!
ただ、内を取られてしまう原因は分かっていたため、池田選手は徐々に対策を進めていきました。
いくら頂点を右に寄せるといっても、限界があります。つまり、これ以上は物理的に無理という限界があるわけです。
どうやら、この限界に達したのが2024/6のグランドチャンピオン準優戦あたりのようで、池田選手は2マークで山口選手の内を突き、3着→2着に上がって優勝戦への切符をゲット。
それ以降、山口選手に良いようにやられることはなくなりました。
頂点をずらしたターンラインを取るだけでも高等技術ですが、そのなかで池田選手と山口選手は、そこで数センチ単位の攻防を繰り広げていたわけですね!
これは、池田選手だからこそ対策できたわけで、山口選手の抜きの技術は相変わらず健在です。そして、この攻防を通じて池田選手の技にもさらに磨きがかかったと予想されます。
やはりSG予想は難しい!?
今回は池田選手と山口選手の話でしたが、実はこれと同じような争いが他の選手同士でも繰り広げられているのがSG常連選手の世界です。
そして、これらの選手たちは、毎日のように切磋琢磨しておりレベルアップしています。
例えば、上で書いた右寄せ勝負は池田選手に軍配が上がっていますが、「抜きの天才」の山口選手のことですから、今後、池田選手の上を行く技を繰り出してくるかもしれません。
競艇の醍醐味は、各選手の持ち味を知った上でどう動いていくかを予想することですが、いちファンにとっては、このSG常連選手たちの異次元の戦いを予想するのは本当に難しいと言えます。
予想サイトの無料予想なども上手く活用しつつ、トップレーサー同士の相性なども考慮して舟券を買っておきたいところですね!