
「まくり差し」(捲り差し)は、競艇で6つある決まり手の1つです。
ボートレースで一番多い決まり手は「逃げ」で、50%程度はこれで勝負が決まるため、アウトコースからの「まくり差し」で勝負が決まれば高配当につながります!
ただし、「まくり差し」での決着はよく起こることではありません。

この記事では、どのような時に「まくり差し」での決着が起きるのか、起こりやすい競艇場はあるのかなど、詳しく解説していきます!
「まくり差し」とは
まずは、「まくり差し」のお手本(?)として、こちらの動画をご覧ください。
6コースから出走した峰竜太選手が、あまりにも見事な「まくり差し」を決めています!(峰選手は主に1マークで使うことが多いです)
まず、「まくり差し」とはどのような決まり手なのか説明しましょう。
「まくり」は、主に3コースより外の艇が全速ターンし、内側にいる艇を外側からまとめて追い抜く方法。

一方、「まくり差し」は、途中まで「まくり」と同じ攻め方ですが、途中で先行艇の空いた内側の隙間を狙い、モンキーターンで全速のまま鋭く差して抜け出す戦法です!
「まくり」に比べて、「まくり差し」はより高い技術が求められる技であり、一定以上のレベルの選手でないと成功率は低いと言われています。
「まくり差し」が決まる条件を理解すれば、通常は有利な1コースを外した予想が立てられるので、上手くいけば高配当を得ることができます!
「まくり差し」が決まる条件
上で書いた通り、「まくり差し」は、いつでも誰でもできる技ではありません。
まず、スタートタイミングやモーター性能については、出走表や展示航走を見ればある程度の情報を集めることが出来ます。
インの選手よりも良いスタートを切り、そのまま全速でまくれる「行き足」の良いモーターならば、全ての艇をまとめて「まくる」ことも出来ますし、先にターンしたインの先行艇がいた場合は、その内側を差して「まくり差し」で抜け出せます。
そして、何より、この絶妙なタイミングを見極める選手の技術の高さが必要です。
いくらエースモーターを引き当てても、経験の浅い選手では、「まくり差し」を決めることは簡単ではありません。
まず、モンキーターン(艇上で立ち上がり、ターン時に右足でボートを右に蹴ってボートの向きを変える技術)ができないとダメすが、この習得は半端な努力ではありません。
1日に7~8回、転覆・落水するのは当たり前だそうで、着替えだけでも大変です。
SG常連の今垣光太郎選手でも、習得に数か月を要したそうです。

現在では競艇学校でも必修技術としてモンキーターンを教えていますが、実戦で使えるレベルになるには、卒業後も相当な練習が必要です。
モンキーターンを使った「まくり差し」ができるようになるためには、2節~3節くらいは捨ててかかる必要があるとも言われます。
逆にいうと、モンキーターンを習得し、「まくり差し」が出来るようになれば、一流選手への道が開けるとも言えます。
SG常連選手は全員、「まくり差し」を習得しています。彼らが一般戦などに出ると無敵を誇るのは、この強力な武器があるからです。
選手のコース別データなどを確認して、「まくり差し」を決められそうな技術がある選手かどうか、チェックしてみましょう。
「まくり差し」は黒明良光選手に由来?
かつて「黒い弾丸」と呼ばれ、活躍した黒明良光選手(22期・2005年引退)。体が大きく体重が重いので、出足が重要なイン戦は好まず、インの位置取りが激しそうなときはアウトに回ることが多かった選手です。
この黒明選手、スタートとターンが上手く、モンキーターンを使った「まくり差し」開発前から非常に鋭角的なターンを見せていました(当時、まだ若者だった今村豊選手に「全速ターン」を教えてもらったとか)。
「まくり差し」という言葉は、「まくってから差す」という、黒明選手の戦法から名付けられたものとも言われています!

もし、モンキーターンの頃から始まっていたら、今頃「まくり差し」でなく「モンキー差し」とでも呼ばれていたかもしれませんね!
黒明選手はスタートが上手かったので、前に出れば普通にまくり、並んだらターンで差してくるということで、彦坂郁夫選手や野中和夫選手なども何度もしてやられています。
拒食症にかかってしまい、ブラックコーヒーだけを飲み続けて体重を落とした結果、21連勝という記録を作ったという黒明選手。
1985年の第20回鳳凰賞(現在のボートレースクラシック)を優勝後、「正直言って、もう勝ち疲れた。もう勝つのはええかのう。」と名言?を残しています。
ちなみに、黒明花夢選手(125期・登録番号5113)は、黒明選手のお孫さんです。
2022年、黒明花夢選手が児島の一般戦で6号艇から勝利し、3連単で76万1,840円という払戻金の日本記録を作った際には、御年80歳前の祖父は「変な記録を作りやがったなぁ。俺はなんて言えばいいんだよ。」と言ったとか言わないとか。。
「まくり差し」が決まりやすい競艇場

これまで説明したモーターや選手の技術面とは別に、「まくり差し」が決まりやすい競艇場というものが存在します。
まず、スピードに乗った全速ターンをするため、安定した静水面が必須です。水の流れのない淡水で(プール状の水面、海水の場合なら引き潮など)、水面が静かな時が「まくり差し」の狙い目です。
更に、コースの広い競艇場も、「まくり」や「まくり差し」が決まりやすい条件の一つです。
特に、1マークのバック側が100メートル以上あるような広いコースが良く決まります。
※ただし、関東でいうと、淡水でコースが広く「日本一の静水面」と言われる多摩川、1コースが弱いことで知られる戸田などでは、4カドの「まくり」が多く、「まくり差し」で決着するケースはさほど多くありません。
以下では、「まくり差し」が多いと言われる代表的な競艇場を紹介しましょう!
ボートレース浜名湖
浜名湖の「まくり差し」の多さは、全国でもトップクラスです。
1コースの勝率が低いことで有名ですが、決まり手で「逃げ」の次に多いのが「まくり差し」です。
特に3コースからの「まくり差し」での決着は、全国でもトップクラスの高さ。
理由の一つは、浜名湖のコースが広いこと。
これは、1マークのバック側が126メートルもあるため、思い切って握ってくる選手が多くなることによります。
5~6コースでも2~3着が十分狙えるコースと言われています。
また、競争水面は潮が流れ込む汽水だが、干満の差がなく、静水面ということも要因の一つです。
ボートレース蒲郡
蒲郡は基本的にイン有利と言われていますが、データを見るとそうでもありません。
「まくり」と「まくり差し」を合わせると、「逃げ」とほぼ同じ数字になります。
その理由は、蒲郡が汽水でも潮位の変化がなく、全国屈指の静水面であることと、2マークに比べて1マーク側がかなり広い造りになっていることです。
特に1マークのバック側は156メートルもあり、アウトからの「まくり差し」が決まりやすい条件が整っています。
ボートレース常滑
常滑は海水ですが、開催期間中は完全なプール状になるので、潮の流れや潮位の変化がなくスピードターンが可能です。
基本的にはイン有利ですが、4カドまくりや5~6コースからの「まくり差し」が決まりやすいのが特徴です。アウトからの「まくり差し」が決まると高確率で万舟になります。
ボートレース津
津は淡水でプール状の静かな水面ですが、冬場に強い向かい風が吹くのが特徴です。
そのため、4コースからの「まくり差し」が良く決まります。
また、スロースタートの3コースからでも「まくり差し」が決まるのが、ここの特徴です。
ボートレース児島
児島は海水で、潮の干満差が最大2.5メートルあるので、満潮時と干潮時ではレース展開が変わります。
満潮時は「逃げ」と「差し」が強い水面、干潮時は「まくり」「まくり差し」の水面に変わります。
特に冬場は強い追い風が吹くので、「まくり差し」が決まる条件が揃っています。

「まくり差し」は決まると鮮やかなので、好きな決まり手と言う人も多いです。高配当になることが多いので、この記事で挙げた条件が揃った時には、是非「まくり差し」で大穴を狙ってください!

