競艇において、モーター(エンジン)の性能は、勝敗に大きく影響します。
選手のウデとモーターの性能が、それぞれ何割ずつくらい勝敗に影響するかは諸説ありますが、「インからアウトになるにつれて、モーターの性能の比重が大きくなる」とも言われています。
それほど重要なモーター性能ですが、あるレースで選手がどのモーターを使用するかは、前検(前日検査)における抽選で決まります。
出走表や予想紙などには、各選手がその開催で使用する「モーター勝率」や「モーター2連対率」などが記載してありますが、これらのデータはどのように見れば良いのでしょう?
ボート勝率、「前検タイム」などの使い方についても、あわせて解説していきます!
この記事では、モーター勝率、ボート勝率、前検タイムの見方について解説します。モーターの性能・ルール・抽選などについては別の記事にまとめていますので、こちらをご覧ください。
モーター勝率
モーターは1年交換ですが、新品の時点で既に性能差があり、使用するたびに部品の摩耗・劣化でエンジン出力が下がっていくため、選手がレース中に整備を行ってメンテナンスをします。
あまり良くないモーターを整備力の低い選手が更に悪くしてしまったり、転覆事故で大きなダメージを受けてしまうモーターがあったり。
一方、元々良いモーターが、整備力の高い選手ばかりに当たって、高い性能を維持し続ける場合もあります。
このように、モーターは、時間が経つにつれて個体差が大きく広がっていきます。
モーター勝率について
出走表や各競艇場のページで公開されているモーター勝率は、着順によって得た点数を出走数で割ることで算出されています。
これは、選手の勝率の計算方法と同じですが、モーターは常に同じ選手が扱うわけではないことが、選手の勝率とモーター勝率との大きな違いです。
つまり、モーター勝率は、モーターを扱う選手が一定の操縦技術や整備力があることを前提とした勝率であることに気を付けましょう。
どんなに良いモーターでも、選手がレースに負ければ勝率は下がります。逆に、悪いモーターでも、選手のウデによってレースに勝てば、勝率は上がるわけです。
また、ある選手の整備で調子の上がったモーターは、その選手との相性によってそうなった場合も少なくはないので、次節に使う選手にとっても同様に良いモーターなのかどうかは別です。
モーター勝率が高いからといって、その艇が確実に強いとは限りません。
新しいモーターであれば出走数が少なくデータ面での信頼に欠けますし、部品交換をした後のモーターであれば何か問題があったことが予想されます。
なお、勝率の目安を簡単に考えると、1着~6着までを1回ずつ取ったモーターがあると仮定して、勝率を計算すると5.16になります。
これを平均値とすると、この数字より高ければ、一応は「勝率の良いモーター」と言えます。
エースモーターについて
それでは、実際に各競艇場のモーターをみてみましょう。
以下は桐生競艇場の、モーターの2連対率ベスト10です。
表から分かる通り、40号機が、勝率・1着率・2連対率・3連対率すべてトップです。
22号機も、40号機には劣りますが、3位以下に比べて相当に良いことが分かりますね。
この40号機と22号機のように、他のモーターより相当に良いモーターが存在することがあります。
特に40号機は抜群に良いですが、このようなモーターを「エースモーター」または「超抜機」と呼びます。
このような「エースモーター」は、各競艇場に必ず存在するとは限りません。
以下は、宮島競艇場のモーターの2連対率ベスト10です。
2連対率をみると、55号機がトップですが、出走数が2回しかありません。
各競艇場では、モーターを60~70機くらい用意していますが、1開催で走る選手は50名程度であり、ほとんど誰にも当たらなかったモーターもあります。
55号機はその可能性があり、データ数が十分でないので除外して考えます。
すると、2位の48号機がトップですが、3位以下のモーターと比べると、あまり差のない成績になっています(3連対率は高いですが、勝率は6.58に止まり、「抜群に良い」とまでは言えません)。
つまり、この場合は、エースモーターはないと言えます。
これらのデータは、艇国DBというサイトで確認することができます。モーター番号をクリックすると、(当期分だけですが)そのモーターを使っていた選手を見ることもできます!
初めに書いたとおり、ボートレースは選手のウデとモーターの性能の組み合わせです。
エースモーターがあるかどうか、勝率の高いモーターを誰が抽選で引いたか、確認しておきましょう!
エースモーター以外の注目モーター
なお、レース中継の解説者や予想紙が、エースモーターではないのに「このモーターは要注目」と評価している場合があります。
エースモーターは一定期間内での集計結果ですが、実は突然良くなるモーターも存在します。
モーターの戦績で考えるのは、いわば一般的な見方であり、例外も存在するわけです。
ある程度使用されたモーターは、多かれ少なかれ、何か問題点があるのが普通です。
しかし、引き当てた選手が整備力が非常に高かったり、また「まぐれ」で問題となっていた部分の修理に成功したりすることで、モーターが急に本来の性能を取り戻すことがあります。
こういうモーターは、「前・前々開催の優勝機、または優出機」の場合が多いです(もちろん、そうでない場合もあります)。
「モンキーターン」という作品を見たことがある方は、主人公がワースト機を引き当ててしまい、どう直しても全く良くならず、負け続けるレースがあったことをご存知かと思います。
この話では、主人公と同行していたB1選手のアドバイスに従って見直したところ、モーターの一番の問題部分を突き止めて修理に成功し、ワースト機を超抜機なみにに蘇らせることに成功しました。
しかし、時すでに遅く、主人公は優勝戦はおろか準優戦にも乗れませんでした。ですが、この主人公が直したモーターは、その後は一変して好成績を叩き出すことでしょう。
このような場合、それまでがワースト機だったので、期間統計では上位に来ないわけですね。
これは現実のレースでも同じであり、その競艇場の常連にしか分からない「隠れ超抜機」とでも言えるモーターが存在することがあります。
こういった情報は、解説や予想紙からしか得られませんので、注意して収集するようにしましょう。
ボート勝率
前検日には、モーターの抽選と同時にボートの抽選も行われます。
ボートについては、「水を吸っているボートは滑りが悪く重い、水を吸っていないボートは軽くて滑りも良い」などと言われます。
しかしながら、ボートに対して選手が技術面で何かできるかというと、これは何もできません。
出走表をみると、ボートの勝率や2連率が掲載されていますが、これがレースの勝敗にどれくらい関係するのかを検証した人がいるそうですが、ほとんど影響しないという結果だったそうです。
モーターの項でも書いた通り、開催側は抽選での不公平が少しでも少なくなるよう、モーターを1年ごとに総入れ替えをしているくらいです。
選手がどうすることもできないボート本体の抽選で勝敗に大きな差が付くのは、選手も開催側も、そしてお客さんも望むところではないでしょうから、そのようなことはまず無いでしょう。
以上から「ボート勝率はそれほど勝敗に影響しない」と考えて良いと思われます。
前検タイムについて
前検日で、モーターとボートが決まったら、選手はこれらを組み合わせて試走を行いますが、その前にプロペラ調整を行います。
プロペラは微妙な調整で、「出足が良いタイプ」「伸びが良いタイプ」「回り足が良いタイプ」などの特徴を出すことができます。
「プロペラゲージ」という測定機器で、プロペラの加工・調整の仕上がりをチェックし、自分にとって最も良い形にプロペラを調整します。
そして、試運転や前検航走を行い、スタート練習やタイム測定を行います。ここで最も早いタイムが「前検タイム」として公表されています。
開催初日のレースは、それまでの結果がなく、予想のためのデータが多くありません。そこで、開催前日の「前検日」のタイムを、「前検タイム」として公開してくれているわけです。
なお、高い整備力を持つ選手は、モーターやプロペラを整備して調整してくるので、「前検タイム」は時間が経てば経つほど意味がなくなると言われています。
ですが、それは整備力のある選手の話。
経験不足で整備力に欠ける選手の場合、「前検タイム」が悪いにもかかわらず、立て直すことができないまま本番に突入、または一節間ずっと立て直すことができないこともあります。
「前検タイム」はあまり注目されませんが、これが悪い場合、ある程度の整備力がないと立て直せません。
そして、整備力は簡単に身に付くものではなく、高い整備力を持つ選手は意外と少ないものです。
レース3日目くらいになると、成績から今節の各選手の様子も見えてきますが、初日~2日目あたりまでは全国勝率を基準に本命が決まることも多いです。
しかし、全国勝率が高くても、整備力に欠ける選手の場合、「前検タイム」が悪い場合は評価を下げて考えた方が良いことを覚えておきましょう!