競艇の中継や予想紙では、よくボートの「モーター」という言葉が出てきます。
実際には、いわゆる「モーター」ではなくエンジンのことを指すのですが、競艇では「モーター」と呼ぶのが通例になっています。
モーターは競艇場に60~70機ほど用意されており、レースごとに抽選で選手に割り当てられますが、誰がどのモーターを引くかはレースの勝敗を大きく左右します!
この記事では、そんな競艇のボートのモーター(エンジン)について、基本から解説していきます!
競艇のモーターのスペック
現在の競艇で使用されているモーターは、全て「ヤマト発動機」という会社が製造している「ヤマト331型出力低減モーター」です。
これは、重さ約42kgの水冷2サイクルガソリン機関の縦型直列2気筒エンジンで、排気量は400cc。
いわば、400ccのバイクと同じようなエンジンであり、最大出力は毎分6600回転、最高馬力は31馬力です。
全ての競艇場で、この同一規格のモーターが使用されており、それ以外は使われていません。
モーターは、ボートの後部に位置し、船外に取り付けられています。モーターの回転運動がギアケースを経て、プロペラに伝わって回転。この回転力でボートが進む仕組みです。
※なお、ボート本体やプロペラも、ヤマト発動機の製造したものが使われています。
つまり、選手たちは同じスペックのモーターで競走しているわけです。
しかし、スペックは同じでも、モーターにはそれぞれの個体差があります。
モーターの使用期限と個体差
競艇場のモーターには、最長で1年間という使用期限があります。
つまり、1年経ったら、それまでのモーターは全て破棄され、新品のモーターに入れ替えられるわけです(交換のタイミングで、新しく番号を割り振ります)。
この交換タイミングは競艇場側がスケジュールしますので、いつ交換が行われるかは競艇場により異なります。
この点、例えばバイクだって10年くらいは乗れるわけですから、「1年で交換するのは早すぎない?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これには、ちょっとした事情があります。
同じメーカーの同じ型式のモーターでも、新品の時点で、すでに「良く回るモーター」と「あまり回らないモーター」が存在します。
新品の時点で既に性能差があるわけですね。
モータは全て同じ材料・工程で作られていますが、ミクロ単位で見ると、どうしても微妙な個体差が出てしまい、「当たり」と「外れ」が出てしまうのです。
これは競艇のモーターに限らず、全ての機械や部品に共通しています。
出荷時点で、製品が一定の基準を満たしているかどうかは確認されますが、「基準をギリギリで通過したもの」と「基準を余裕でクリアしたもの」に分かれてしまうわけですね。
モーターの抽選
上で書いた通り、モーターには新品時点で個体差がありますが、使用期限までの1年間で、色々な選手がモーターを整備し、その整備には巧拙があります。
また、1年間のうちには転覆事故などを起こす選手もいるかもしれませんが、そういった艇のモーターは大きなダメージを受けます。
つまり、新品状態から時間が経てば経つほど、モーターの個体差は大きくなっていきます。
各競艇場には60~70機のモーターがあり、番号が振られて管理されていますが、1台たりとも同じモーターはないと言えます。
そのため、主催者側は、各レースで選手にどのモーターを割り振るかを、抽選で決めることにしています。
選手は、レース開催の前日(前検日と言います)の指定された時間までに、競艇場に集合し、定刻になると「モーター抽選会」が行われます。
商店街の福引きのように、ガラガラを回すと玉が一個出てきて、それに番号が書いてあります。
選手は、引いた番号のモーターを、そのレース期間中はずっと使用し続けることになります。
モーターの調子を見ながら、悪いところがあれば部品の交換やメンテナンスなどの整備を、選手自身が行っていくことになります。
なお、抽選会では、モーターの勝率のアナウンスを行ったり、勝率の高いモーターを引き当てた選手に拍手が送られるなど、盛り上がる場面があります!
良いモーター・悪いモーターとは
それでは、「良いモーター」と「悪いモーター」とは、いったい何が違うのでしょうか?
モーターは元々「31馬力」で設計されており、いくら良いモーターといえども、31馬力以上は出ません。また逆に、悪いモーターでも、31馬力までは出せるようにはなっています。
モーターの出す馬力は、基本的にエンジンの回転数に比例します。そのため、モーターの良し悪しを決めるのは、エンジン回転のスムーズさなのです。
ヤマト331型は最大6600回転までエンジンを回せますが、31馬力は回転数が6600回転の時の馬力であり、それより低い回転数では、それ未満の馬力しか出ません。
そうなると、「停止状態、あるいは低い回転数から6600回転まで回すのに、どれくらいの時間がかかるか」がポイントになります。
この時間が早ければ早いほどレースでは有利。つまり、モーターの良し悪しとは、「加速力」の差と言えます。
良いモーターは、「最高馬力が出るエンジン回転数」まですぐに回ってくれるので、加速が良くなります。悪いモーターは、それに達するまで時間がかかるので、加速力が悪くなってしまうのです。
整備力の重要性
モーターは、新品状態から始まり、使用されるにつれ部品の摩耗や劣化が起こり、段々と本来の性能を出せなくなっていきます。
そのまま何も整備をしないで使い続けると、加速力が下がり、最大馬力を出せない状態になってしまいかねません。そのため、選手はモーターの性能を維持すべく、整備に精を出すわけですね。
抽選で良いモーターを引いたのならいいですが、悪いモーターを引いてしまった場合、選手の整備力がレース結果にダイレクトに影響します。
とはいえ、整備力は一朝一夕に身につくものではなく、特に経験の少ない若手などはベテランに太刀打ちすることは難しかったりします。
良いモーターを引いた選手が圧倒的有利になってしまうと、整備力が低い選手にとっては、抽選でレースの勝負が決まってしまう・・・ということにもなりかねません。
そういった事態を防ぐため、上でも書きましたが、1年でモーターを総入れ替えしてリセットする、というルールが導入されているわけですね。
レース結果を大きく左右するモーター。モーターの良し悪しを予想にどう織り込むかについては、こちらの記事でまとめていますので、あわせてご覧ください!
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