非常識なFって何?
競艇の世界では即日帰郷になってしまう程厳しい罰則が課せられる「非常識なフライング」とはどのような過失なのでしょうか?
フライングのことをFと表示されるため「非常識なF」と表記されます。因みに出遅れはレイトのLで表示されます。
そもそも競艇は他の競技のように止まっている状態からボートをスタートさせて順位を競う競技ではなく、助走をつけてスピードに乗った状態でスタートラインを通過するフライングスタートと言う方式をとっています。
そのため、スタート時点で少しでも舳先がラインを越えてしまえばフライングと言うことになり競技から除外され、その選手絡みの舟券は全て買戻し、返還されるシステムになっています。
即日帰郷の重大な過失
とにかくフライングは重大な過失であり、0・01秒でも早いスターをしてしまうことは公正が絶対である公営競技の根幹に関わる一大事なのです。
ただし、フライングスタ―トと言う特性や水上と言う他の競技には無い特殊な条件の上、風や潮位の変化による潮の影響もあるため、幾らベテランのレーサーでも目測を誤ることもあります。しかし、それは決して許されることではなく、重大な過失として重いペナルティを課せられます。
フライングは通常、同一節に2回犯すと即日帰郷の命令を受けます。一度ならまだしも二回目は許さないぞ、と言うというところでしょうか。
ただし、「非常識なフライング」となると一回で即日帰郷と言うことになります。何処が通常のフライングと違うのかと言うと、非常識なフライングの定義は0・05秒以上のフライングのことを指します。
早すぎるとは言っても0・05秒ですから、とてもシビアな世界だということが分かると思います。ただし、1日2回乗りの選手に限っては、2回目のレースの後に帰郷の措置が取られます。
コンマ05秒とはどのくらいのフライングかと言うとスロースタートとダッシュスタートではスピードが多少違うので同じには測れませんが、「しまった舳先が少し出てしまった」というレベルではありません。
ボートの三分の一くらい出てしまったという位でしょうか。さすがに肉眼でもはっきりわかるほどのフライングで、実況アナウンサーも「あー、これは早い」と絶叫してしまう程の飛び出しです。コンマ1秒を越えてしまうと完全に1艇身は飛び出てしまいます。
重いペナルティが課せられます
当然ですが即日帰郷のほかにも厳しいペナルティが課せられます。1回目で30日フライング休みを課せられ、1か月間レースに出られません。2回目になると更に60日間が加えられ、3か月間斡旋が無くなるのです。
3回目には90日プラスになるので、半年間の仕事がなく無収入になってしまいます。競艇選手は賞金で生活しているため、三回以上すると廃業の危機にさらされ、事実上の引退勧告ともいうべき事態になってしまいます。
更にSGやGⅠ、GⅡなどのプレミアムレースの準優戦以上でフライングをしてしまうとフライング休みばかりでなく、一定期間プレミアムレースの出走が出来なくなるので、選手にとって死活問題ともいえます。もし、予選であっても得点がマイナスになってしまうため、順位を下げてしまうことになります。ただし、賞金王決定戦や賞金女王決定戦に限り上位12位までに入っていれば出場が許されます。
なぜ、これほど厳しいのでしょう
このように、どうして「非常識なフライング」には厳しい措置を取るのかと言えば、1艇のフライングによって集団のフライングを誘発してしまうからです。
201年の2月に行われた宮島競艇9Rでは1艇がコンマ19秒のフライングをしたことから、それに引きずられる形で全艇が非常識なフライングをしてしまいました。勿論レースは不成立となり舟券は全て払い戻しになり、全員即日帰郷。
2018.2.5 宮島競艇9R 全艇フライングで実況の女性が色っぽいため息をつく – YouTube
これは、この制度が決められて以来初、前代未聞の事態になりました。競艇では6艇中5艇がフライングや事故によって返還、もしくは失格になった場合はレースが不成立になります。
特にフライングに対して厳しい措置が取られるのは、レース主催者などの関係者ばかりでなく、舟券を買ったファンにも大きな損害を与えてしまうからです。
レース中の事故で選手が負傷したり大けがをして病院へ運ばれたりすればファンもある程度納得しますが、フライングは選手自身の過失ですから、幾ら舟券のお金が返還されても許せないという声が出ても仕方ありません。
フライング返還とは、フライングをした選手に関する舟券が全額返還となることで、売った舟券の代金を全て主催者が買い戻すということです。
当然ですがその分主催者の儲けは減ります。もし、レースが不成立になれば儲けどころか経費分が損失になってしまうのです。例えレースは成立しても払戻金は、返還後にオッズを再計算するため、的中していても払戻金は減ってしまうことになります。