この記事では、競艇界のトップレーサーの1人である峰竜太(みね・りゅうた)選手について取り上げます。

競艇界における超ビッグネームであり、一時代を築いたレーサーである峰選手。但し、2024年8月の一般戦の優勝以降、優勝からは遠ざかっています。
峰竜太選手について
峰選手は1985年生まれ。出身は佐賀県唐津市で、佐賀県立唐津西高等学校を卒業しています。
2025年でちょうど40歳ですが、①2017年・②2020年のオーシャンカップ、③2021年のボートレースオールスター、そして④2018年・⑤2020年のグランプリ、⑥2023年のボートレースダービーと、SGを6回も制覇した実績があります。
登録期は95期で、登録番号は4320。
やまと訓練生時代はリーダー的存在で、山田哲也選手・岡村仁選手・山口裕太選手と共に「95期四天王」と呼ばれていました。
2004年11月に地元・唐津競艇場で2着デビューし、12月に福岡競艇場で初勝利。
2005年11月に唐津競艇場の一般戦で初優勝を飾ると、2007年にはG1・SGに初出場。そして2009年にはG1初優勝。
あっと言う間に佐賀のエースとして君臨、「佐賀のガバイ旋風」と呼ばれました(また、勝っても負けても泣くことが多いため、「泣き虫王子」とも)。
師匠は松尾孝明選手(2010年引退)ですが、なんと中学の同級生の父親だそうで、この偶然の出会いがなければボートレーサー・峰竜太は誕生しなかったかもしれません。
峰選手も、すでに山田康二選手・上野真之介選手など数人の弟子がおり、「峰ファミリー」と呼ばれています。
タレントの峰竜太さんとは同姓同名(タレントの峰竜太さんは芸名ですが、峰選手は本名)。互いに存在を認識しており、相席食堂という番組では共演も実現しました。
舟券を外さない「万能型レーサー」
峰選手のレーススタイルは、走・攻・守を備えた「万能型レーサー」。
モーター性能や展開次第で、そのレースで誰が一番強いかが分かりにくいのが競艇というスポーツ。
しかし、峰選手は平均スタートタイミング(ST)0.15(SGでは0.13!)と、どのコースからでも1着を狙えるうえ、道中の追い上げも得意としています。
1~4コースの3連対率は70%~90%。1コースからは他を寄せ付けない「逃げ」で高勝率を誇り、他コースからでも「まくり」「差し」「まくり差し」の技術は非常に高いです。
なお、峰選手が1コースに入ると人気が集中し、配当が安くなりがちなので、2コースより外側にいる場合に峰選手を軸にするという賭け方もよく行われています。
ホームは唐津競艇場
峰選手のホームは唐津ですが、年間を通じて6割~7割が追い風、5R~8Rではアウト側は逆光スタートなど、難しい条件がそろった競艇場です。
地元選手が有利とされていますが、唐津は所属選手が少なく、「地元」と呼べる選手は多くありません。
峰選手は、追い風でのスタートも、逆光でのスタートもコツを掴んでおり、さらに腕は超一流。唐津では絶対に外せない存在です(峰選手の強さは、ホームコースの難しさが培ったものかもしれません)。
なお、唐津はイン有利ですが、中でも3号艇が有利です(2号艇は1号艇の回りしろを抑えることを意識するため、スタート位置を1号艇に合わせがちで、助走距離が3号艇より短くなりますが、位置的には1号艇よりも不利という、中途半端な立ち位置)。
そんな唐津で育ったからか、峰選手は若干2号艇に対する苦手意識があるようにみえます。
しかし、普通のレースで峰選手が2号艇に乗ったら一番人気になることは確実。大穴が出る可能性が高いとも言えます。
4カドの峰は峰なんよ
峰選手の強さを表現するフレーズとして、「相席食堂」にてお笑いコンビ・千鳥のボケ担当の大悟が「4カドの峰は峰なんよ」と発言。ちょっとした流行語になりました。
ただ、峰選手は4カドが特に強かったわけではないうえ、このフレーズの流行によって他選手に警戒されて4カドで勝てなくなったとの本人談。
2021年グランプリでの悪夢
そんな峰選手ですが、2021年の第36回グランプリで、とんでもない事件を起こしてしまいます。
優勝戦は峰選手が1号艇で大本命でしたが、4号艇だった瓜生正義選手の「ツケマイ」を受けて、なんとターンマークに舳先をぶつけて転覆。
結果、売上42億7752万のうち41億1426万が返還になるという、競艇史上最悪の返還レースとなってしまい、主催者が激怒したことは想像に難くありません。
2022年の出場停止処分~復帰して無双
さらに、2022年に入り、峰選手自身が主催したネット上の個人的なゲームイベントで、レース予想屋と接触していた疑いが浮上。
日本モーターボート競走会から「ボートレースの信頼を失墜させた」と 4か月の出場停止処分を受けてしまいます。
しばしのブランクを経て、2022年6月末、唐津競艇場の一般戦にてついに復帰。
復帰初日4Rでは、2コースからまくって勝利、通算1500勝を達成しました。
さらに、初日12Rのドリーム戦。4号艇カドでしたが、スタートは横一線で、第1マークを抜けたバックストレートでは6番手。しかし第2マークで2艇を抜いて4番手。ストレートで1艇抜いて3番手、さらに次の1マークで1艇を抜いて、あっという間に2番手に。
さすがにトップは抜けませんでしたが、ターンするたびに後続艇との差は広がるばかりで、圧倒的な格の違いを見せつけました。
その後もスタートさえうまくいけば勝利という無敵ぶりを発揮し、2022年後期はB1級でしたが、2023年前期でA1級に復帰。
SG復帰戦となったの2023年10月のボートレースダービーでは、いきなり優勝。11月のチャレンジカップでも2位に入り、その時点では賞金ランキング首位でした。
ちなみに、2023年グランプリ直前の峰選手の勝率は8.83。8点台というだけで凄いのに、もう少しで9点台になろうかという驚くべき数値でした。
2代目艇王と呼ばれた植木道彦選手の全盛期1997年~2002年に残した勝率が下表ですが、2023年の峰選手の勝率8.83を上回っていたのは、1999年(8.88)だけでした。
2023年グランプリでは、トライアル2nd初戦で1号艇。賞金ランキングを争う馬場貴也選手が初日で消えるなか、大本命として期待されましたが、2日目に痛恨の6着。
優勝戦は3号艇から出走、惜しくも石野貴之選手に敗れ、結果は2着でした。
なお、このグランプリ直前、峰選手は突然「今回が最後と思って臨んでいくつもりです」と、グランプリを優勝したら引退するとも取れる発言をしました。
グランプリ後は以下のコメントをしています。
「(優勝戦は)全力を尽くしたけど勝てなかった。もう1回、賞金王のタイトルを取らないと。自分の人生で、賞金王2回で終わるのはないな・・・。やっぱり、3個とらないと辞められない。」
2024年度以降は優勝回数が激減
2024年に入ると、1月の浜名湖の周年記念・浜名湖賞、2月の九州地区選手権と、2つのG1で立て続けに優勝。
相変わらず好調かと思いきや、その後は8月の唐津の一般戦で優勝したのみで2024年は終了(2024年の賞金ランキング7位)。
そして、2025年は優勝ゼロ。なんと、1年近く優勝から遠ざかっています(2025年6月現在)。
2025年2月、地元・唐津の周年記念・全日本王者決定戦では、ドリーム戦で1号艇から出走。圧勝が期待されましたが、なんと1マークで転覆。負傷のため途中帰郷となりました。
2025年5月のボートレースオールスターでは、出場権がある年は2017年以来守り続けてきたファン投票1位の座を毒島選手に奪われてしまいました(峰選手は2位)。
オールスターは意地の優出も、優勝戦では僅かに及ばず2着。
2025年6月、地元・唐津の周年記念・全日本王者決定戦では、準優戦で1号艇でしたが敗れてしまいました。
峰選手の心境とは?植木選手や山崎選手との共通点
古くは2代目艇王・植木道彦選手、近年では山崎智也選手など、若くして引退した一流レーサーがいましたが、彼らには共通点があります。
それは「大きなダメージを追った過去がある」という点です。
2代目艇王・植木道彦選手は、かつて桐生競艇場で瀕死の事故にあい、一命をとりとめての復帰。
事故時は「もう競艇は止めよう」と本気で思ったそうですが、復帰のめどがたった時、「お世話になった人達に恩返しをする意味で、もう少し頑張ろう」と心に決めたそうです。
それから約20年、「もう十分だろう」という思いが引退を決意させたそうです。植木選手の引退は39歳でした。
かつてSGで11勝を挙げ、最優秀選手に何度も選ばれた山崎智也選手は、2022年に48歳で突然引退。
山崎選手は、絶頂期にグランプリ決勝で1号艇に乗り、一番人気でしたがフライングをしてしまい、巨額の損失を出してしまいました。
それ以来、リベンジを目指し、14年後の2015年グランプリにやっと出場を果たして、賞金王を獲得。
そして、この優勝で、「やりきった感」を感じてしまったようです。
まだ脂の乗っている年齢でしたが、2015年以降、山崎選手の成績はふるいませんでした。
テクニックも整備力もあったため、勝率だけは高い水準を保ちましたが、優勝とは縁のない期間が続いたのです。
この背後にあったのは、「優勝しても、つまらないと思うようになってしまった」ことでした。
このように思うようになってから引退するまで、山崎選手は実に7年間も走っていました。
競艇選手である以上、レースに出るのは仕事なので当然で、モチベーションが落ちても中々ふんぎりが付けられないようです。
峰選手の心境とは
今年40歳の峰選手も、もしかしたら山崎選手と同じような心境になっているのかもしれません。
峰選手も山崎選手と同様、グランプリ決勝でフライングをして巨額損失を出した過去があります。
また、2022年にはファンとの交流が問題視され、長期出場停止処分となりました。
こういった大きなダメージを負うと、当座はそれを取り戻すべく必死になりますが、一応は取り戻せたかなという実感があると、その達成感でモチベーションが下がってしまうようです。
峰選手も、2023年のグランプリで決勝に乗り、優勝できなかったものの2着で、一定の達成感があったのでしょう。それが先のコメントにつながったものと思われます。
もう1回グランプリで優勝するという目標は掲げているものの、心の中に「やりきった感」が出ているのであれば、思う通りにいかないかもしれません。
いずれにせよ、一時代を築き上げたような名選手にとって、40歳というのは一つの節目になる年齢のようです。
常滑の周年記念では、「元スーパースターの峰です。これからもよろしくお願いします。」などと挨拶していた峰選手。
どんなスポーツ選手にも旬というものがありますが、峰選手にとってそれは2020年台前半だったのは間違いないでしょう。

ただ、峰選手はついこの前まで競艇界をリードしてきた選手。まだ年齢的に衰えるには早く、再び神通力を取り戻してほしいものです・・・
峰選手のプライベート
峰選手は、YouTubeチャンネルも解説しており、人気を博しています。
女性人気も高い峰選手ですが、2012年に結婚しています。お相手は友人から紹介された一般の方で、元保育士だとか。お子さんは3人で、皆女の子のようです。
2014年には唐津市に1億円の自宅を建て、家族5人で乗れる高級外車が数台あるとか。
趣味はサーフィン。過去、ヨットでも素晴らしい記録を残している(九州大会優勝、国体四位入賞、県大会優勝、世界選手権出場)そうで、水上スポーツは全般的に得意なようです。