近年はあまり使われなくなりましたが、「ピンロク」という言葉があります。
これは、レース結果が1着(ピン)か6着(ロク)、つまり「うまく行けば1着、行かなければ6着」という選手を意味する言葉です。
かつては「ピンロク」の選手が結構おり、それなりの人気を集めていたのですが、近年はテクニックの向上・制度変更などにより、こういった選手は少なくなっています。
この記事では、「ピンロク」の選手のレーススタイル、またそういった選手の数が減ってしまった理由について解説します!
「ピンロク」の選手のレーススタイル
では、どういったレーススタイルの選手が、「ピンロク」の選手なのでしょうか。
まくり専門の選手
「うまく行けば1着、行かなければ6着」というレーススタイルといえば、まずはまくり専門の選手が想像されるかと思います。
まくりはアウトから仕掛ける戦法で、トップスタートを決めて成功すれば1着。
反面、スタートに失敗すると、もともと不利なコースの上、内側の艇が起こした「引き波」を最大5本も越えなければならず、1マークで遅れてしまう結果、6着になりがちです。
加えて、まくり専門の選手は、基本的にプロペラやチルト角度を伸び足だけを考えて整備します。
これは、まくりという戦法は伸び足を重視するからですが、その反面で回り足が極端に悪くなり、これも1マークで遅れてしまい6着になってしまう原因となります。
ハイリスク・ハイリターンにつき、近年は「まくり専門」の選手は非常に少なくなり、東京の阿波勝哉選手、福岡の小川晃司選手、三重の澤大介選手くらいです。
3選手とも1号艇を割り当てられても6コースに入るくらいの「徹底的なアウト屋」で、スタート勝負をする選手です。
ただ、澤選手は、2021年にアウト屋を引退することを宣言し、インに入ることも多くなりました。
また、小川選手はアウト屋ですが、伸び足でなく回り足重視のセッティングをしています。ですので、まくりに失敗しても回り足を生かして差してくるので、「ピンロク」とまでは言えないかもしれません。
一方で、阿波選手については、純粋な「ピンロク」の選手と言えるでしょう。阿波選手については、こちらの記事で特集していますので、是非ご覧ください。
1着を果敢に狙う選手
また、性格的に1着でなければイヤで、2~3着は避けるというスタイルの選手もいます。
例えば登録番号4610の佐藤大祐選手などは、基本的には枠なりの自在型ですが、とにかくスタート勝負に徹するというポリシーで走るため、「ピンロク」の結果になることが多いようです。
前づけ屋は?
極端な深インとなる可能性のある「前づけ屋」も、「ピンロク」の選手かと思われそうですが、案外そうではありません。
西島義則選手・深川真二選手・赤岩善生選手・今村暢孝選手などが「前づけ屋」として有名ですが、これらの選手は深インでも決めてしまいます。西島選手・深川選手・赤岩選手などはSG常連ですね。
インは位置的な有利があるので、1着が取れなくても、そこそこの着に来ることが多く、6着にはなかなかなりません。
イン主体の選手は整備も回り足中心であり、スタートが遅れても1マークで越えなければならない「引き波」は1本か2本です。
「ピンロク」の選手が減った原因
「ピンロク」の選手が減った大きな原因に、2012年の「持ちペラ制の廃止」が挙げられます。
以前は、プロペラは選手自身が自前で購入し、自分の戦法に合った形に仕上げて競艇場に持ち込んでおり、プロペラの加工に制限はありませんでした。
そのため、伸び足だけ抜群に良いという形にプロペラを仕上げて使うことができたため、「まくり専門」の「ピンロク」の選手が結構いたのです。
ですが、持ちペラ制廃止後は、競艇場備え付けのプロペラを使うことになり、加工内容にも制限が加えられた結果、伸び足だけを追及したプロペラは作れなくなってしまったのです。
澤選手がアウト屋引退を宣言したのも、この持ちペラ制廃止が影響しています。
また、昔はモンキーターンをする選手はごくわずかしかおらず、イン側の選手もマーク旋回時には速度を落とさざるを得なかったので、まくり屋が活躍する余地がありました。
ですが、今やモンキーターンは競艇学校でも必須科目。イン側の選手のテクニックの幅が広がった結果、まくりは決めにくくなったと言えます。
なお、現在は、「まくり」より「まくり差し」の方が多いと、競艇をよく見ている人であれば感じていると思います。
「まくり差し」は、モンキーターンができることが前提のテクニックですが、別に6コースである必要はありません。
そして、「まくり差し」が失敗しても、そこそこの着には入るため、「ピンロク」とはなりにくいのです。
「ピンロク」はもう死語!?
「ピンロク」と言う言葉は、現在は当てはまる選手がほとんどおらず、ほぼ死語と言えるかもしれません。
「ピンロク」の選手が活躍した時代は、それはそれで面白かったのですが、現在はそのようなレーススタイルでは勝つことが難しくなっています。
選手も生活がかかっており、今後、6コース専門で伸び足だけのアウト屋という選手は現れにくいでしょう。
時代の流れであり、仕方がないことなのかもしれませんね。