ボートレース界の最高峰のレースにして、全ての競艇選手の目標である賞金王決定戦(グランプリ)。
また、惜しくもグランプリを逃した選手により競われる、賞金王シリーズ戦(グランプリシリーズ)。
2023年は、これら2つのSGが、12月19日(火)~12月24日(日)にかけて、「ボートレース住之江」で開催されました。
この記事では、グランプリ・グランプリシリーズのレース概要や過去の優勝者、直近開催の結果などについてご紹介します。
グランプリ・グランプリシリーズとは
グランプリは、その年に最も多く賞金を稼いだ最上位のボートレーサー達による、ボートレース界最高のSG競走です。
一方で、グランプリシリーズは、惜しくもグランプリ出場を逃した上位選手によって競われるSG競争です。
具体的には、1月1日~11月開催のSG・チャレンジカップ最終日までの賞金ランキングの上位60名のうち、上位18名がグランプリ、19位~60位がグランプリシリーズに出場することになります。
グランプリでは、優勝戦に出場する6名を選抜するため、トライアル1st、トライアル2ndという2段階の予選が設けられており、賞金ランキングの順位に応じて、どこからスタートするかが決められています。
まず、賞金ランキング7位~18位の12名の選手でトライアル1stが2日間行われ、うち6名がトライアル2ndへ勝ち上がり。
そして、賞金ランキング1位~6位の選手に、1st勝ち上がり6名を加えた12名の選手で、今度はトライアル2ndが3日間行われます。そして、2ndの得点率上位6名が優勝戦へと進み、グランプリ覇者の座を争います。
詳しくはこちらの図が分かりやすいです。
なお、グランプリシリーズ戦は、3日目からグランプリのトライアル1stの下位6人が合流し、難易度がぐっと上がります(1st出場選手は、2日目まで全て1回走りなので、初日から参加しているシリーズ戦の選手とレース数を合わせるため、1st出場選手だけのレースが3日目に組まれます)。
グランプリ組は、点数的にもシリーズ戦出場組より恵まれているので有利です。更に、この1st下位6名だけのレースも少しだけ点数的には有利なので、このレースで1着の選手がシリーズ戦をリードすることが多いです。
賞金金額は、グランプリがボートレース最高額の1億1,000万円、グランプリシリーズが1,800万円になります!
グランプリでは「前づけ」に注意
過去のグランプリ優勝戦を見ると分かりますが、グランプリでは「前づけ」もよく行われ、普通のレースのように「当然に枠なり進入」ではありません。
少しでも有利な位置を取るべく、待機行動の段階から熾烈な争いが繰り広げられます。
特に、2023年の開催場であった住之江は水質が硬いため、鋭角的なターンがやりづらく、また追い風が吹くことが多いため「まくり」がやりにくい競艇場です。1コースの1着率は58.9 %、2連対率でも75.5 %とイン有利につき、1つでも内側に入ろうとするのは当然です。
ちなみに2015年に名称がグランプリに変更されてから、グランプリ優勝戦の決まり手は全て「逃げ」です(上述の2021年の4選手転覆のレースを除く)。「逃げ」で勝利した選手は全て1号艇。いくら「前づけ」に行っても、1コースまでは取れないことが分かります。
この傾向は、住之江がグランプリの固定開催場であった賞金王決定戦の時代からですが、以前は待機行動の制限が緩かったこともあり、6号艇が「前づけ」で1コースを取ったこともありました。しかし、現行の厳しいルールでは、いくら「前づけ」してもせいぜい2コースまでです。
1コースは1号艇でほぼ決まりとみて良いため、そうなると、予選で好成績を収めて優勝戦の1号艇を狙うしかなくなります。ですので、グランプリでは予選から「SGの優勝戦以上」の熾烈な争いが繰り広げられるわけです。
普段はダンプなどしない選手でも、グランプリとなると話は別です。道中で順位が入れ替わるのは、よくあります。
過去5年の優勝者
グランプリ・グランプリシリーズともに2023年で38回目の開催となり、過去5年の優勝者は以下の通りです。
グランプリ
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2023年(第38回) | ボートレース住之江 | 石野貴之 |
2022年(第37回) | ボートレース大村 | 白井英治 |
2021年(第36回) | ボートレース住之江 | 瓜生正義 |
2020年(第35回) | ボートレース平和島 | 峰竜太 |
2019年(第34回) | ボートレース住之江 | 石野貴之 |
参考:https://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/record/list?category=1500
グランプリシリーズ
開催回 | 開催レース場 | 優勝者 |
2023年(第38回) | ボートレース住之江 | 深谷知博 |
2022年(第37回) | ボートレース大村 | 宮地元輝 |
2021年(第36回) | ボートレース住之江 | 新田雄史 |
2020年(第35回) | ボートレース平和島 | 深川真二 |
2019年(第34回) | ボートレース住之江 | 馬場貴也 |
参考:https://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/record/list?category=1800
グランプリ初出場で優勝した選手はゼロ
第1回目の彦坂郁夫選手はノーカウントですが、第2回目以降の開催で、グランプリ初出場で優勝した選手は一人もいません。
これは、グランプリの独特の雰囲気が原因と言われています。
初出場した選手いわく、「全てのレースがSG決勝戦以上の大接戦で、ものすごく消耗する」「SG優勝戦だって緊張しますよ。ですが、グランプリの緊張感は、それとは違う独特のものなんです。なんというか、前検日からプレッシャーを感じるとでもいいますか・・・」。
初出場の選手が勝てないのは、このグランプリ独特の重圧プレッシャーと、他の選手の普段とは異なる強烈な気合や闘志を、初めて経験するからのようです。この状況下で、競艇界の最高峰の強者達を相手に戦うわけですから、なかなか厳しい戦いになるようです。
2023年(第38回)のグランプリ優勝は石野貴之選手!
2023年の第38回グランプリ覇者は、地元・大阪支部の石野貴之選手が1号艇から見事な逃げを決めました。
トライアル2ndで2度の勝利を収め、グランプリ優勝戦のポールポジションをゲットしていた石野貴之選手。賞金ランキング4位から臨んだ本大会では、今年プロ野球で日本一になった阪神タイガース・岡田監督にあやかり、開会式で“優勝”を“アレ”と呼んで優勝宣言していました。
「石野信用金庫」とのあだ名の石野選手ですが、2019年以来、自身2度目のグランプリ制覇を達成しました!
※石野選手の特集記事はこちら
2023年のグランプリ優勝戦は、12月24日(日)12Rに開催され、以下のメンバーで争われました。
- 石野貴之選手(大阪支部)
- 平本真之選手(愛知支部)
- 峰竜太選手(佐賀支部)
- 磯部誠選手(愛知支部)
- 池田浩二選手(愛知支部)
- 茅原悠紀選手(岡山支部)
2号艇の平本選手がピット離れが悪く、唯一のダッシュ艇となりましたが、アクシデントがあり転覆失格。2着は3号艇・峰竜太選手、3着は4号艇・磯部誠選手で、3連単は1,160円(2番人気)でした。
※グランプリの結果も踏まえた、2023年の最終的な賞金ランキングは下記の記事を参照
なお、優勝戦に至るまでのトライアル1st・トライアル2ndの経緯は、以下の通りでした。
トライアル1st
トライアル1stの2日間では、出場選手は1人当たり2回出走し、その結果で得点率を計算して、上位6名が2ndに進出します( 1着=14点、2着=12点、3着=11点、4着=9点、5着=8点、6着=7点)。
短期決戦であり、1着を1回でも取れば高確率で2ndに進めます。逆に、4着以下を取ってしまったらかなり厳しい戦いになります。
12/20(火)~12/21(水)に行われた2023年のグランプリのトライアル1stの結果は、以下の通りでした(数値は得点率、1日目・2日目の順位)。
- 中島孝平:13.00(2位→1位)
- 桐生順平:11.50(1位→4位)
- 濱野谷憲吾:11.50(1位→4位)
- 平本真之:10.50(4位→2位)
- 今垣光太郎:10.50(4位→2位)
- 片岡雅裕:9.50(2位→6位)
- 羽野直也:9.50(5位→3位)
- 毒島誠:9.50(3位→5位)
- 深谷知博:9.50(3位→5位)
- 菊地孝平:9.50(5位→3位)
- 土屋智則:7.00(6位→6位)
- 山口剛:4.50(転覆→1位)※減点5
黄色の6人が2ndに勝ち上がりました(※5選手が得点率9.50ですが、上位着順の差で、片岡選手がトライアル2ndに進出)。
トライアル2nd
そして3日目から始まったトライアル2ndですが・・・いきなり大波乱がありました。
2nd初日11Rで、賞金ランキング2位の1号艇・馬場貴也選手がターンマークに接触しなんと転覆。妨害失格で減点10を食らい、いきなりファイナル進出は絶望的となってしまいました。
加えて、馬場選手の転覆で、4号艇・中島孝平選手もよけきれずに転覆。中島選手は翌日、発熱のためレースを欠場して帰郷(そのレースは5艇で争われました)。
トライアル2ndに欠員が出た場合、1stで脱落した6人の得点上位が繰り上がるルールですが、シリーズ戦で予選を突破している選手は除かれるため、1st脱落組かつシリーズ予選敗退の菊地孝平選手が繰り上がることになりました。
※菊地選手にグランプリ優出の権利はなく、6号艇での出走(ただ、賞金額からみると、菊地選手にはプラスになる可能性)
結果、妨害失格で減点10の馬場選手、途中帰郷の中島選手、グランプリ優出の権利がない菊地選手を除いた10選手で争われた結果、優勝戦進出は以下の6名になりました。
※数値は得点率、1着=10点、2着=9点、3着=7点、4着=6点、5着=5点、6着=4点
- 石野貴之選手:9.00(3位→1位→1位)27点
- 平本真之選手:8.33(4位→2位→2位→3位→2位)25点 ※1stから
- 峰竜太選手:8.00(1位→6位→1位)24点
- 磯部誠選手:7.33(4位→1位→4位)22点
- 池田浩二選手:7.33(3位→2位→4位)22点
- 茅原悠紀選手:7.00(1位→3位→6位)21点
今年のグランプリは地元・大阪支部の石野選手が見事に「アレ」を達成しました。競艇界も野球界も、関西勢が席巻する結果となりましたね!